2014年12月2日火曜日

「非戦闘地域」の限定をなくした集団的自衛権

総選挙をめぐる論戦で安倍晋三首相は、集団的自衛権が行使できるよう憲法解釈を変更した7月の閣議決定について、あたかも危険な道に踏み出したものではないかのように説明しています。
しかし、日本が攻撃されていなくても、他国の戦争に参戦する集団的自衛権の危険性はとうてい覆い隠せるものではありません。

閣議決定でとりわけ重大なのは、自衛隊が活動する範囲を「非戦闘地域」に限定するという従来の法律上の枠組みをなくすと、明記していることです。これは結局、戦闘地域まで自衛隊が行くことになるといわなければなりません。
閣議決定は、他国の武力行使と一体化しないように設けていた「戦闘地域」と「非戦闘地域」の線引きをやめました。かわりに、「他国が『現に戦闘行為を行っている現場』ではない場所」であれば、自衛隊の補給や輸送などの支援活動を実施できると定めています。他国が戦闘行為をおこなっていた地域でも、いったん停止状態になったとの政府の判断次第で、自衛隊を派兵できるというものです。こうした地域がいつでも戦闘地域になりうることは今日の対テロ戦などの常識です。

実際、アフガニスタン戦争でのドイツ軍の派兵は後方支援に限定していましたが、55人の犠牲者を出しました。後方での治安維持や復興支援のはずが、毎日のように自爆テロや銃撃などの戦闘に巻き込まれたのです。
今回の閣議決定で自衛隊が危険にさらされる場面は確実に増えるといわなければなりません。

アフガニスタンの戦場に集団的自衛権の発動で送られ、命を落とした英軍士官の母は、いまも息子の死の意味に向き合っています。「自国の防衛以外の戦争は、その理由を国民は見極めないといけない。権力のために戦争をする政治家がいる。代償を払うのは常に一般の国民だから」(「東京」6月29日付)