2014年12月31日水曜日

2014年12月29日月曜日

国民の命は消耗品ではない

  アジア太平洋戦争のとき、召集令状の葉書の郵便料金は一銭5厘でした。転じて、兵隊の命はわずかな金額で集めることができるほど価値の低いものとの意味で、「一銭5厘の命」といわれました。
 これを思い出したのは、24日発足の第三次安倍内閣の防衛相・中谷元氏の発言(「東京」28日付)に接したからです。

  集団的自衛権とは、日本が攻撃されていないのに、他国に対する武力攻撃を実力で阻止することです。
  7月の閣議決定は、自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」に限定するこれまでの枠組みをなくしました。事実上、戦闘地域への出動を可能とし、集団的自衛権の行使容認に踏み込んだのです。自衛隊員の生命の危険が高まったことは明々白々です。
 にもかかわらず中谷防衛相は自衛隊が「いろんなリスクを持つ」と平然と言い放つとともに、集団的自衛権を行使してもその危険は「現在と変わりがない」と言明。自衛隊員の命の重みをどう考えているのか、疑問が深まるばかりです。

  中谷防衛相はホムルズ海峡での停戦前の機雷掃海についても、「自公の間に意見の相違があるとは認識していない」と語り、実施する構えを見せています。
  しかし日本の石油備蓄についていえば、約半年分が確保されています。仮に同海峡が封鎖されても長期的な影響が出る可能性は低いというのが実情です。
  だいたい安倍政権がエネルギー問題を重大視するならば、なぜ、原発の40倍にものぼる巨大な潜在力を持つ自然エネルギーの大規模な普及をすすめないのでしょうか。
  加えて「経済的打撃」と、日本人の命とを同列に扱うこと自体、論理の飛躍があります。それは「一銭5厘の命」と同様に、国民の命を消耗品扱いする思想があるからではないでしょうか。
  
 国家の自衛権は例外的な権利です。武力行使禁止こそ国連憲章の原則です。まして日本国憲法は戦力の不保持や交戦戦の否認をうたっています。集団的自衛権が入り込む余地はまったくありません。防衛相も歴史の歩みや憲法の平和理念を真剣に学ぶ必要があります。
   
(写真は、日露戦争〈1904~05年〉に出征した兵士の「凱旋」を記念する碑。重砲兵や歩兵の肩書付きで地元13氏の名前が刻まれています=関東の古寺の境内)

2014年12月25日木曜日

しめ縄作りに挑戦

  正月の玄関飾りなどを稲わらから作る教室が地域でありました。主催は県の公園協会、講師は地域のボランティアの方々で、約20人が参加しました。
  「オリジナルを作る楽しさがあるはず」。参加動機は立派でしたが、稲わらを編む作業は簡単ではありませんでした。とくに4本の稲わらを使って細い縄を編む作業では、足で稲わらを押さえ、両手で2本ずつねじって互いに巻き付くようにするのですが、締まった形によれず一苦労。
  でも講師の熱心な援助のお蔭で、大きくて形のよいしめ縄が完成。緑色の網の目も鮮やかでした。
  しめ縄は魔除けといいます。地域の伝承文化を担う気分になりました。

2014年12月21日日曜日

気持ちのよい朝

日曜の朝は散歩に出かけます。身体を動かしたいのと、すがすがしい空気を味わいたいからです。
 けさも日の出の6時40分過ぎ、身支度を整え、外へ。それほど寒くない朝でした。
 まだ静かな住宅街を抜けて古寺の境内に入ると、市の保護樹林の指定を受ける大イチョウの葉が掃き清められていました。
 広い墓地を通り抜けて小高い丘に出ると、かえでが紅葉し、住宅街の向こうに山並みが広がっていました。
 犬を散歩させる男性に出会い、「おはようございます」と声をかけました。
 「おはようございます」
 気持ちのよい朝が始まりました。

2014年12月20日土曜日

民意に学びたい総選挙評

国際政治学者の藤原帰一氏が「朝日」12月16日付夕刊の「時事小言」で総選挙結果について論評しています。
 いろいろ述べていますが、中心的には自民党と共産党の選挙結果を取り出して、「政権政党と抵抗政党というお馴染みの図式が復活した」と指摘。この図式は「自民党の長期政権を保障する」と断じています。果たして妥当な見方でしょうか。

圧力にも8割余が投票せず
 今回の自民党の選挙結果について藤原氏は「勝利」「大勝」と記しています。たしかに獲得議席だけをみると、同党は衆院定数475の3分の2を維持しましたが、前回より4議席減らした通り、「解散前より大きく動いたわけでもな」く(「毎日」社説、15日付)、横ばいというのが正確な評価です。
 民意をもっともよく反映する比例代表での同党の得票は全有権者のわずか17%でした。にもかかわらず大きな議席を占めたのは一選挙区から一人を選ぶ小選挙区制によるものです。実際、小選挙区で同党の得票率は48%でしたが、議席占有率は75%にもなりました。
  有権者は自民党に「白紙委任」(藤原氏)などしなかった。自民党が総選挙公示前、NHKや在京テレビ局に選挙報道の「公平中立」を求める文書を送るなど圧力とも取られることをおこなっても、8割余の有権者は同党に投票しなかったのです。

先が見えない自民党政治 
 次世代の党は藤原氏も「壊滅的な打撃」と指摘するように、19議席から2議席へと大後退しました。今回、自主憲法の制定や集団的自衛権の確立、原発の活用、アジア太平洋戦争の侵略性の否定などを公然と訴えていた通り、有権者にそうしたタカ派路線、排外主義が受け入れられなかったといえます。他方、同じような主張を唱える安倍政権・自民党は有権者の支持を失うことを恐れ、正面からそれらを提起せずやり過ごしました。自民党は次世代の党の惨状を対岸の火事などと放っておけないはずです。
  自民党の選挙結果を藤原氏が手放し同然に評価しても、リアルにその内容をみるならば、先が見えない自民党政治という実像が浮かび上がってくるのです。

どの党よりも上回る比例の伸び率
 藤原氏は自民党の長期政権を保障する理由として、共産党が「政権を争う存在ではない」からだと述べています。
  しかし共産党は今回、比例代表で前回の369万票から606万票へと、1・64倍の票を獲得。この伸び率はどの党よりも上回っています(自民党1・06倍、公明党1.03倍、民主党1.02倍、社民党0.92倍、維新0.68倍)。
  共産党は今回の躍進で議案提案権を獲得し、活躍の舞台を広げています。すでに議案提案権を得た参議院で同党は「ブラック企業規制法案」を提出し、厚労省がブラック企業の重点監督と、悪質な企業名公表の通達を出しました。政権を取る前から、政治を動かしているのです。
 また同党は自民党政治への批判にとどまらず、「消費税に頼らない別の道」や「北東アジア平和協力構想」の対案を示すなど、自民党政治とは違う政策的立場ももっています。 
 
 
自民党に完勝した要求連合
 加えて注目したいことは、藤原氏がまったく触れていないことですが、沖縄で共産党も加わる「オール沖縄」が「辺野古新基地建設に反対」を掲げて4つの小選挙区すべてで勝利したことです。要求で一致する保守・革新・無所属の連合が国政選挙で自民党と対決し、完勝するということは、日本の政治史上まったく新しい出来事です。
  こうした活躍を見せる共産党について、こんごも政権を争う存在ではないと、断言できるのでしょうか。

  結局、藤原氏の総選挙論評は「お馴染みの構図」と決めつける余り、民意から学ぶことを怠った「小言」といわなければならないでしょう。(写真は「東京」12月15日付)

2014年12月17日水曜日

上等な一夜

  ヴァイオリニストの吉田恭子さんが出演するコンサートに行ってきました。
  活躍し始めたころに出会った吉田さん。情感をこめた、伸びのある演奏が魅力です。

 2001年以来、現在までに14枚のCDをリリースし、「題名のない音楽会」「徹子の部屋」などにも出演。合わせて小中学生等を対象とする演奏活動に力を入れ、これまでの参加者は8万人余を数えるといいます。

 当夜はヴィヴァルディやショスタコーヴィチ、サン・サーンスなどの曲が演奏されました。なかでも印象に残った曲はサラサーテのスペイン舞曲が基調という「ナヴァラ」。温もりのある丁寧な演奏とともに、柔らかなメロディーが心地よく響きました。上等な一夜との満足感に包まれました。

  会場は大きなホールで、大勢の聴衆で埋まりました。大手企業の創業記念の行事でしたが、クラシックファンの拡大につながるとりくみでもあり、改めて企業の社会的貢献の意義に接しました。 

◆吉田恭子ヴァイオリンリサイタルvol15 名器グァルネリ・デル・ジェスで聴く「スプリングソナタ」、3月6日(金)19時開演、東京・紀尾井ホール、申込先http://eplus.jp  03-3237-0061

2014年12月13日土曜日

「尖閣占拠」の打開方向を考える

  テレビの総選挙関連番組で11日夜、「尖閣諸島を中国が占拠したら、日本はどうするのか」との問いに、自衛隊出動を中心とする議論がありました。
 
 たしかに、こうした事態には現行法でも侵略と認定し、自衛隊法の「防衛出動」で自衛隊が「強力な武装をした集団に対する危害射撃」により制圧できるようになっています。ただ、そのさいは事実上の戦争状態と日本が判断したことになり、反撃を受けることも当然想定されます。それだけに理性ある慎重な対応が求められます。同議論への私見を整理しました。

  第一に、尖閣諸島の占拠は、国際的道理を持ちえない暴挙にほかなりません。なぜなら同諸島は歴史的にも国際法上も日本の領土です。1895年日本が領有を宣言して以来、1970年までの75年間、中国側が一度もそれに異議を唱えてこなかったことにも示されています。また軍事力による占拠は、武力行使を禁止する国連憲章の原則をなし崩しにする不法行為でもあります。その占拠は国際的批判を広く浴びることは必至でしょう。

  第二に、「中国による占拠」との仮のシナリオ自体、確率はリアルに検証されるべきです。まず、日本と中国の経済的な相互依存関係は劇的に深まっています。日本の輸出総額に占める中国の割合は2割を超え、中国における日本企業(関連子会社含む)で働く中国人は約900万人を数えています。“戦争状態”への突入はそうした経済・通商関係を根底から打ち砕くことになります。また、尖閣には米軍基地も置かれており、「占拠」は世界最強の米軍を戦争に引き寄せる事態でもあります。

  第三に、万一、「占拠」があったとしても、無人の尖閣の場合、それはただちに国民の生命に結びつくことではありません。むしろ日本が軍事力を行使した場合、自衛隊員の命が奪われ、同時に相手側を殺す危険が一気に高まります。無人の尖閣に、人の命を犠牲にしてでも自衛隊は出動すべきかどうか、国民のなかでの深い議論が求められます。日本政府は「占拠」への喫緊の対応として、外交はじめ国連や第三国への働きかけなどにこそ取り組むべきでしょう。

  すでに日中間では民間レベルでも文化やスポーツ、農業の交流などが活発におこなわれています。観光も相互に盛んです。これらは戦争を食い止める重要な道です。こうしたとりくみをいっそう積極的に支援する政府こそ、いま待たれているのではないでしょうか。
 そして紛争を戦争にせず、徹底した話し合いによる解決を何よりも追求する平和の共同体を、北東アジア(日本、中国、韓国、北朝鮮など)で粘り強くめざす政府こそいま必要ではないでしょうか。(本稿は柳澤協二著「亡国の安保政策」を参考にしました)

奥深さを感じた酒まんじゅう作り

  地域のコミュニティセンターでの酒まんじゅう作りに参加しました。
 市役所の担当の方とボランティアの“酒まんじゅうの先生”5人が事前に準備し、午後1時から4時半までの3時間半、作り方を丁寧に教えてくださいました。

 16人が4グループに分かれ、1グループで作った総数は45個。種を発酵させている間、和菓子屋さんや材料を売っている店などについて、にぎやかに情報交換。酒まんじゅうは手間がかかるので作っている和菓子屋さんが少ないとのことです。
 
 1個を試食すると、お店のものに劣らない香りと舌ざわり。5個持ち帰りました。家でも試行錯誤しながら作るつもりです。

  最後にボランティアの方から「酒まんじゅうを作る人が減ってきたので、ぜひ地域に広げてください」とのお話がありました。地域の伝承文化の一つと、改めて奥深さを感じました。(記・妻)

2014年12月9日火曜日

「地域密着」アイスバックスの優勝を祝す

  うれしいニュースがありました。アイスホッケーの全日本選手権の最終日7日、栃木日光アイスバックスが初優勝したことです。チームが1999年に誕生して以来、注目し、新聞に小さく載る試合結果に一喜一憂してきました。

  日本のアイスホッケーは今回の全日本選手権が82回を数えたように戦前からの古い歴史があります。最近は女子チーム“スマイルジャパン”の活躍で注目されましたが、競技人口やファンの広がりに照らして、まだ“マイナースポーツ”の域を脱していないことは否定できない事実です。競技普及の先導的な存在であった企業チームは相次ぎ廃部し、維持にお金がかかるなどの理由から閉鎖されるリンクも少なくありません。

  そうしたなかアイスバックスは、1999年に古河電工(創部1925年)が活動を停止したあと、4万人の署名を力に市民クラブとして栃木県日光市に誕生しました。翌年、資金難から廃部が決まるものの、存続署名は10万人に広がり、2001年に再スタート。現在、アイスホッケーのトップチームの多くが製紙会社などを後ろ盾にするなか、アイスバックスは日本で唯一のプロチームです。
 活動理念の一つには地域密着を掲げ、スケート教室を数多く開いているほか、小中学校の訪問・交流も昨季は9回実施。ホームスタジアムではファンが熱心な応援を繰り広げています。
  以前、元ヘッドコーチの村井忠寛さんが「地域の人たちや子どもに夢を与えるには、(大企業の)後ろ盾のないぼくたちのチームにしかできない大きなミッション(使命)だと思っています」と、そのやりがいを語っていたことは印象的でした。

 アイスホッケーはスピーディーで迫力のあるスポーツです。今回の決勝戦でもスピードに乗ったカウンター攻撃や、氷上で身体も巧みに使うディフェンスなどは見事でした。
 新しい境地に達したアイスバックスがそうした魅力を地域に根差しながらいっそう発揮し、アイスホッケーファンとスポーツ文化を大きく広げることを願っています。

2014年12月7日日曜日

「多様な働き方」は社会不安定化への道

  いまラジオから自民党のCMが流れ、安倍晋三首相が「アベノミクスで雇用を増やす」と話していました。 アベノミクスと雇用。今回の総選挙での首相の常套句です。同政権が働く人の利益に熱心であるかのような装いですが、実態は真逆です。

  雇用問題の重大性は、自民党が総選挙の公約に、「多様な働き方を妨げる規制の改革」を掲げていることにも示されています。これまでも多様な働き方などの美名のもとに、派遣やパートなど非正規労働者は増え続けてきました。10月も前月より10万人増え、すでに1980万人に達しています。全労働者5280万人に占める割合は37・5%に上昇。1985年は16・2でしたから、約30年で2.3倍になりました。
 
 
  非正規労働者の増大はまさしく政治によるものです。その典型は、1985年に自民党などにより成立した労働者派遣法と、そのご三回の改定のたびに派遣可能な業種が増え、派遣期間が長くなってきたことにあります。今回も総選挙後、解散で廃案になった労働者派遣法の改定案が「多様な働き方を」と称して再提出され成立すれば、派遣労働者はさらに増える可能性が高まります。企業が3年ごとに働き手を交代させれば、ほとんどの仕事を期間の上限なく派遣に任せられるというのがその内容であったからです。

 厚労省の調査でも派遣労働者の6割超が「正社員として働きたい」と望んでいます。
 なぜなら、派遣先の都合一つで契約を切られるなど、身分が不安定です。茨城県の金属加工工場で働く派遣社員の男性(37)。派遣の契約期間は3カ月で、更新される保証がありません。先が見えないなかで、ほしい車やパソコンは買えないといいます(「朝日」11月22日付)。
 賃金の低さも歴然としています。正規の人では2013年に受け取った平均給与が473万円だったのに対し、非正規は168万円にとどまり、約300万円の開きがあります。千葉県の女性(51)。派遣の仕事で4人の子どもを育て、入学金や修学旅行の費用はカードローンで借金、電気は何度も止められました。女性の活躍を強調する首相の言葉は遠く感じるといいます(「朝日」12月4日付)。

 雇用問題は、けっして非正規労働者などだけの問題ではありません。希望を持てない将来、子どもも含む貧困の広がり、少子化の深刻化などに結びついているように、日本社会の不安定化をはらむ重大な問題です。
 打開方向として、労働者派遣法を抜本改正し、派遣から正社員への道を開くことなどが求められています。大企業の膨大な内部留保の一部を非正規の正規化や賃金のアップに活用することも重要です。
 人間らしい働き方を追求し、国民の笑顔があふれる日本をぜひめざしたいものです。(写真は「朝日」12月7日付)


2014年12月3日水曜日

人としての道 菅原文太さんをしのんで

   「いつも静かに本を読んでいました」。弟子であったという俳優の宇梶剛士さんはその横顔をこう語っています。「いつも弱き者の味方でした」とも。
  俳優の菅原文太さんが亡くなりました。東日本大震災被災者への支援や脱原発に務め、つい最近は沖縄県知事選で新基地建設反対を訴えた翁長雄志候補の応援にも参加しました。

  これまでの菅原さんの発言でとりわけ印象的なのは、憲法について「戦争放棄の9条は守るべき」ときっぱり語っていたことです。あの戦争で多くの国民が肉親等をなくしたことを、「忘れたくない」とも述べました。戦争反対の根底には、小学6年生のとき太平洋戦争が始まり、疎開先の屋根の上から空襲を受けた仙台の空が真っ赤に見えたという戦争の記憶もありました。

  妻、文子さんは菅原さんについて、“朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆうべ)に死すとも可なり”の心境で日々を過ごしてきたといいます。人としての道を悟ることができれば、すぐに死んでも悔いはないという中国の思想家孔子の言葉です。
 
 旺盛な読書や進歩的な活動を戦争体験の上に積み重ねて、「人としての道」を探究し続けた菅原さん。その生き方に改めて感銘を覚えています。(写真は「スポーツニッポン」12月2日付)

2014年12月2日火曜日

「非戦闘地域」の限定をなくした集団的自衛権

総選挙をめぐる論戦で安倍晋三首相は、集団的自衛権が行使できるよう憲法解釈を変更した7月の閣議決定について、あたかも危険な道に踏み出したものではないかのように説明しています。
しかし、日本が攻撃されていなくても、他国の戦争に参戦する集団的自衛権の危険性はとうてい覆い隠せるものではありません。

閣議決定でとりわけ重大なのは、自衛隊が活動する範囲を「非戦闘地域」に限定するという従来の法律上の枠組みをなくすと、明記していることです。これは結局、戦闘地域まで自衛隊が行くことになるといわなければなりません。
閣議決定は、他国の武力行使と一体化しないように設けていた「戦闘地域」と「非戦闘地域」の線引きをやめました。かわりに、「他国が『現に戦闘行為を行っている現場』ではない場所」であれば、自衛隊の補給や輸送などの支援活動を実施できると定めています。他国が戦闘行為をおこなっていた地域でも、いったん停止状態になったとの政府の判断次第で、自衛隊を派兵できるというものです。こうした地域がいつでも戦闘地域になりうることは今日の対テロ戦などの常識です。

実際、アフガニスタン戦争でのドイツ軍の派兵は後方支援に限定していましたが、55人の犠牲者を出しました。後方での治安維持や復興支援のはずが、毎日のように自爆テロや銃撃などの戦闘に巻き込まれたのです。
今回の閣議決定で自衛隊が危険にさらされる場面は確実に増えるといわなければなりません。

アフガニスタンの戦場に集団的自衛権の発動で送られ、命を落とした英軍士官の母は、いまも息子の死の意味に向き合っています。「自国の防衛以外の戦争は、その理由を国民は見極めないといけない。権力のために戦争をする政治家がいる。代償を払うのは常に一般の国民だから」(「東京」6月29日付)