2015年2月28日土曜日

この春、社会に出ていくために

赤ちゃんをあやしながら
  失業し、求職活動をする知人の話です。
  「職業安定所で求人票の検索機を操作していると、隣に30歳前後の男性が赤ん坊を抱えてやってきた。立ったまま、赤ん坊をあやしながら1時間以上、求人票を検索していたけど、結局、求人票を一枚も印刷しないで帰っていったよ」
  赤ちゃんを抱えていた男性は、失業し、希望する仕事がなかなか見つからなかったのでしょうか。

一倍を大きく下回る正規の求
  「求人倍率は高水準」と胸を張る安倍晋三首相。しかし一人に何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率は正社員に限ると、14年平均で0.66倍にとどまります。
  求人は職種により差があるのも現状です。建設や輸送関係などは多いものの、事務職などは一倍を大きく下回っています。ちなみに近隣の職安に尋ねると、事務職の直近の正規の場合、求人数323人、求職者数1206人で、有効求人倍率が0.27倍と低迷しています。

非正規を大量に増やす派遣法改悪案
  仮に仕事が見つかっても非正規の場合、賃金や労働条件は劣悪です。仕事内容は正規と同じでも賃金に大きく差があり、定期昇給も賞与もないというケースが少なくありません。「契約は半年ごとの更新で、失業しないか不安がつきまとう」と語る人が大勢います。
  加えて、いま政府が国会に提出しようとする労働者派遣法改悪案は、「原則1年、最大3年」という派遣受け入れの期間制限を事実上なくすことで、3年ごとに人を代えれば、無期限に派遣社員を使い続けられる仕組みとなっています。これでは正社員の派遣社員への大量の置き換えが進むことは避けられません。

勤労権の保障は政治の責任
  職を自分の意思と違う形で失うと、収入が絶たれることはもちろん、人との日常会話がほとんど途絶え、孤独感さえ味わうといいます。働くことは、収入を得ることのほか、社会への貢献という意味があります。もともと勤労は憲法27条が保障する国民の権利です。
  政治の責任で非正規から正規社員への流れをつくり、失業中の人がこの春、社会に出て胸を張って働くことができるように、その条件をいっそう広げるべきです。

2015年2月26日木曜日

皇太子と平和

 55歳の誕生日を迎えた皇太子。記者会見で、ことしが戦後70年になることにふれて平和の文言を少なくとも4回あげ、その大切さを指摘しました。安倍晋三首相の常套句である「積極的平和主義」はどこにも見当たりませんでした。

 そもそも積極的平和主義は、集団的自衛権を含むことを安倍首相が認めている通り、平和と相反する文言です。日本が攻撃を受けていないのに、他国の戦争に参戦するのが集団的自衛権であり、その危険性は計り知れません。
 1月に急逝した憲法学者の奥平康弘さん(東京大学名誉教授)も積極的平和主義を厳しく批判していました。「『戦争と平和』というのは対になった言葉であって、『平和』に形容詞はいらんのです」「平和主義ではないことを語っているんです」(『憲法九条は私たちの安全保障です。』)
 
 皇太子は会見で、日本が戦後、日本国憲法を基礎に平和と繁栄を築き上げてきたと、憲法の積極的意義を指摘しました。沖縄慰霊の日や広島・長崎への原爆投下の日などにふれて、謙虚に過去を振り返り、悲惨な体験が正しく伝えられていくことの大切さも強調しています。真っ当な発言に共感を覚えたのは私一人だけではなかったと思います。(写真=自宅近くで、満開になり始めた白梅、2月26日)

2015年2月20日金曜日

また石油を口実に戦争を繰り返すのか

  安倍晋三首相は16日、国会で、中東ホルムズ海峡での自衛隊の機雷掃海について集団的自衛権の行使で掃海が可能との見解を示しました。石油供給が滞り国民生活に死活的な影響が出る場合などとの説明でしたが、「自衛」の名に自分の国を亡ぼすような危険さえ隠されています。

国際法上認められる日本への武力攻撃
  首相の挙げた事例は、A国とB国との戦争中、A国が機雷でホルムズ海峡を封鎖したというケースですが、ここで見落としてならないことは、機雷を敷設したA国は日本に対しては直接攻撃を仕掛けていないという事実です。
 この段階で日本がB国の立場に立って集団的自衛権を行使し、機雷を掃海するならば、それは日本がA国に対していくさを仕掛けたことであり、先制攻撃にほかなりません。
 この事態について阪田雅裕・元内閣法制局長官は、「国際法上、A国は日本に対して武力攻撃することが認められることになる」と指摘。わが国にも火の粉が降りかかってくる行為であり、国民に相当の覚悟がいることだと述べています(岩波ブックレット『憲法九条は私たちの安全保障です。』)。

歴史の教訓を立脚点に
 日本の石油備蓄は約6カ月分あります。戦争の当事国ではない日本が事態に外交や経済的措置など非軍事で対応する時間的猶予はけっして短いものではありません。
 そもそも「自衛」を理由にして軍事に走ることがいかに危険であるかは、歴史の苦い教訓としても示されています。太平洋戦争は、米国からの石油の供給が止まったことを理由に、「日本は滅びてしまう」と称して開始されました。その経済封鎖も、日本が中国を侵略し拡大したために、結果として米国から石油がこなくなったというのが真相でした。
 日本国憲法9条はこうした歴史を踏まえ、二度と戦争をしないように武力行使と戦争を永久に放棄しています。首相の機雷掃海論はこの憲法の到達点を台無しにし、歴史を逆戻りさせるものといわなければならないでしょう。

2015年2月18日水曜日

喫茶店のアオキ

  「アオキでは」。喫茶店で、ふと外を見たときです。店の周りに植えられた低木が赤い実をつけていたからです(写真)。よく見ると、やはりアオキでした。
  一年中、青々とした枝と葉をつけることからその名がつけられたというアオキ(青木)。冬になると、雌株(めかぶ)は楕円(だえん)状の実をつけ、そのご赤く熟します。 
 雑木林の林床に分布し、日蔭を好むといわれますが、青々とした葉や赤い実は生命力、勢いを感じさせます。人が集う喫茶店ではプラスのイメージを醸し出しています。

2015年2月16日月曜日

これまでは「切れ目」があった

「切れ目のない」という言葉を安倍晋三内閣からよく聞きます。先の施政方針演説(2月12日)でも「切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備」との訴えがありました。国民の安全に責任を持っているかのような言い方です。
  しかし、この文言の意味こそ今回の演説で触れられなかった集団的自衛権を行使することにほかなりません。

「切れ目」を認めていた歴代の政権
これまで自衛隊の活動範囲には「非戦闘地域」という限定がありました。憲法9条が戦争や武力行使を禁じていることから、他国の戦闘との一体化は違憲とされてきたからです。
1993年にPKO法を成立させ、ペルシャ湾の機雷除去のために自衛隊を初めて海外派遣した宮澤喜一政権。同法に「非戦闘地域」にしか自衛隊を派遣することはできないとの縛りをかけていました。そのごブッシュ米政権の「テロとの戦争」に協力しようと、陸上自衛隊のイラク派遣に踏み切った小泉純一郎政権は2003年の国会で、「自衛隊の行くところが、非戦闘地域なのです」と言わざるを得ませんでした。「自衛隊の活動を戦闘行為と切り離す『切れ目』を明確にした」(小森陽一・「9条の会」事務局長、岩波ブックレット『憲法九条は私たちの安全保障です』)ことは明らかでしょう。
それゆえ2008年の名古屋高裁での判決は、イラクでの航空自衛隊の米兵輸送などについて戦闘行為に結びつく活動であり、憲法9条違反との判断を下しました。

集団的自衛権のリスクを語ろうとしない首相
 ところが安倍内閣は昨年7月の閣議決定で「非戦闘地域」という概念を撤廃。自衛隊の活動範囲を「『現に戦闘が行われている現場』以外」に拡大しました。これには当然、自衛隊の活動中に戦闘が始まる可能性のある地域も含まれます。他国の戦闘との一体化に道を開く集団的自衛権の行使容認に踏み出したのです。これこそ「切れ目のない対応」の実相というものでしょう。
集団的自衛権の行使容認は明白にリスクをともないます。戦闘に巻き込まれ、テロの標的になる危険が一段と増すからです。しかし安倍首相はこのリスクを国民にいっさい語ろうとしていません。同路線の矛盾でもあります。

国会論議「時間をかけるべき」
 世論は安倍政権の集団的自衛権行使に批判の目を向けています。同関連法案の国会提出について「時間をかけるべき」は54.9%、「法整備は必要ない」が15.6%で、合計すると70.5%に上ります(共同通信社の2月6、7両日の世論調査)。これらは「切れ目」を求めるエネルギーといっても過言ではないでしょう。連帯して、「海外で戦争ができる国」づくりの危険性をより明らかにし、ストップをかけたいと思います。

2015年2月12日木曜日

地域の中古車販売業者

  「スローライフに切り替えよう」。長年使用したマイカーを手放すことを決意した知人。大手メーカーの系列店に引き取りの査定を依頼しました。しかし使用年数が長い等々の理由で、まったく不本意な額でした。
 あきらめきれず、近所の中古車販売店に声をかけました。店を開いて15年という同店。予想を超える引き取り額を提示しました。
 「ウチは家族経営。大手の店に比べて、もうけはそれほどなくてもね。近所のよしみということもあるし」

 売却の翌日、早速同店前に陳列されたマイカー。走行距離が短く、ワンオーナーであった等のセールスコピーが貼られていました。そして売値が引き取り額とそれほど大差がなかったことにも知人は驚きました。

  自動車5社(トヨタ、富士重工業、マツダ、スズキ、三菱)の営業利益が過去最高を更新したと報じられています。トヨタは二年連続で2兆円超も利益を上げ、内部留保を積み増し。労働者や下請け業者ら1000人が参加した「第36回トヨタ総行動」(11日、愛知県)では、再雇用で働く労働者から「家族との生活を犠牲にして働く労働者に、もっと賃金を支払ってもいいはずだ」との声が上がっています。

  他方、住民との共存共栄を探り、便宜をはかることもいとわない地域の中古車販売業者。住民にとって頼りがいのある存在です。応援したくなりました。

2015年2月5日木曜日

金目鯛かまぼことわさび漬

  宿での夕食後、ビールが飲みたくなりました。静岡県伊豆地方の温泉地。つまみを手に入れるため街に出ると、かまぼこ屋の看板が目に飛び込んできました。自家製造の老舗のようです。かまぼこは好物の一つです。

 主人が外に出て店じまいを始めていました。急いで店内に入ると、年代物のショーケースに数種類のかまぼこが並べられていました。一つひとつに手書きの説明カードが添えられ、手塩に掛けた製品であることが伝わってきます。「人気No.1」と書かれたカードには金目鯛入りとありました。価格はそれほど高くありません。

  金目鯛は脂肪分の多い白身の深海魚。伊豆地方の金目鯛は漁場が近いため鮮度もよく、旬は冬といいます。
  「申し訳ありませんが、金目鯛のかまぼこ、切っていただけますか」
  不躾と思いながらも食べたい一心で切り出すと、主人はうなずき、店の奥の工場風の一室に。しばらくすると、女性が切り分けたかまぼこを手に現れました。プラスチックのパックに入れ替えてくれ、「爪楊枝も入れておきますね」。こまやかな心配りでした。

  金目鯛かまぼこは歯応えのある食感に加え、味の旨みと濃さをしっかり堪能できました。併せて同店で購入した天城産のわさび漬けも生わさびの茎や根をカリカリと味わえるほど新鮮でした。

2015年2月4日水曜日

アギーレ監督解任問題 日本協会の機能強化を

サッカー日本代表のアギーレ監督の解任問題。日本サッカー協会に対しては「選手やファンのために組織を運営する」視点が貫かれていたのか、大いに疑問です。日本協会への質問、意見をまとめました。

 1、昨夏のワールドカップ(W杯)ブラジル大会で日本代表は一次リーグ敗退に終わりました。協会はその総括を十分にしないままアギーレ監督の招請に動きました。これはなぜですか。敗因分析ができていなことは岡野俊一郎・元日本サッカー協会会長も認めるとともに、「アギーレ氏を監督にした理由がわからない」(「毎日」4日付)と指摘しています。

 2、疑惑の試合はスペイン現地でも直後から八百長が疑われていたといいます。協会は昨年8月、アギーレ氏を監督にするさい、徹底して“身体検査”をおこなったのでしょうか。

 3、スペインの検察が八百長疑惑を裁判所に告発した昨年12月の時点でも協会は結論を先送りしました。今回の起訴前の解任に照らすならば、同時点での解任の選択肢もあったのではありませんか。

 4、ことし1月のアジア杯は連覇が代表監督のノルマであったはずです。しかし8強止まりという5大会ぶりの“屈辱”になりました。これには先発メンバー固定の弊害、Jリーグ活躍中の選手の未選出なども指摘されています。「(アギーレ氏の)監督としての力量を高く評価している」(大仁邦弥会長)との見解に説得力はありますか。

 5、「現在の協会には海外との人脈や交渉のノウハウを持つ人材が乏しい」(「日経」4日付)との指摘があります。6月から始まるW杯アジア予選に向けて、協会の機能強化が緊急に求められているのではありませんか。(写真=「スポーツニッポン」4日付)

2015年2月3日火曜日

テロ根絶と集団的自衛権は両立するのか

  過激組織「イスラム国」による湯川遥菜さん、後藤健二さんの殺害は、残虐非道な蛮行でした。怒りを込めて強く糾弾しなければなりません。
 2日の国会でも同事件が取り上げられました。安倍晋三首相は持論の「積極的平和主義」に集団的自衛権が含まれていると述べつつ、「テロのない社会をつくるため、積極的平和主義を進める」と語りました。集団的自衛権の行使をすすめると、テロのない社会が実現するかのような議論であり、耳を疑います。

米国への追従 テロの口実に
 野蛮なテロ行為はどんな理由でも許されるものではありませんが、米国の対テロ戦争に日本が協力するというこの間の対米追従がテロの口実に使われていたことは否めない事実です。
  「イスラム国」が伸長する土壌となったのは、米国によるイラク侵攻(2003年)でした。同侵攻とそのごの介入政策は10万人を超すイラク国民を殺害したといいます。反米感情を高め、過激思想を助長する結果になりました。
 この米国のイラク戦争に当時の小泉純一郎首相は早々と支持を表明。自衛隊を給水や医療支援などを目的にイラク南部サマワに派遣しました。そして04年、過激派組織「イラクのアルカイダ」は日本人男性を誘拐。自衛隊のイラクからの撤退を求め、男性を殺害しました。
 また昨年9月25日、安倍首相はシリア領内での「イスラム国」に対する米国などの空爆について理解を表明。「米国を含む国際社会の『イスラム国』に対するたたかいを支持している」(米ニューヨークでの記者会見)と述べて、「イスラム国」とたたかう米国らへの追従を際立たせたのです。そしてシリア入りした後藤さんから連絡が途絶えたのは10月下旬でした。

敵対関係を深めるのか
 安倍首相は2日の国会で、「イスラム国」への米国などの空爆に参加することについて「あり得ない」と否定し、後方支援も「ない」と退けています。
 しかし同政権は昨年7月、米国などの軍事行動に自衛隊が密接に協力・参戦する集団的自衛権の行使容認を閣議決定。自衛隊の海外での邦人救出を可能と示したほか、米軍などの軍事作戦への後方支援の幅も広げています。いずれも従来は、「国際紛争を解決する手段」としての武力行使になりかねないため、憲法9条で禁じられていた任務です。
 米国も「イスラム国」の打倒を目指す軍事作戦については、「3年から5年はかかるかもしれない」(1月30日、米国防総省のカービー報道官)と語り、強める意向です。同作戦が長期間のたたかいになり、日本の集団的自衛権の関連法制が整備されれば、米国からこれまで以上の軍事的協力を迫られる可能性は否定できません。
 安倍内閣が「テロ対策」として軍事的協力に踏み込むならば、「イスラム国」側との敵対関係をより深め、日本人は日常的に「テロの脅威」に直面しかねないのです。

子どもの幸せを―テロはじめすべての戦火をなくしたい
 「紛争地の子どもの実態を知って欲しい」。こう語って現場で倒れた後藤さん。民衆の日常を襲うすべての戦火が収まることを願っていたに違いありません。
 安倍政権に訴えたい。今回の事件を教訓とするならば、憲法9条をもつ日本として非軍事、人道外交を旗印に、テロを許さぬ立場を貫くとともに、「海外で戦争する国」づくりをきっぱりストップし、平和国家の道を進むべきです。(写真=きょう3日、関東地方は温かい日差しが降り注ぎました)