2015年2月3日火曜日

テロ根絶と集団的自衛権は両立するのか

  過激組織「イスラム国」による湯川遥菜さん、後藤健二さんの殺害は、残虐非道な蛮行でした。怒りを込めて強く糾弾しなければなりません。
 2日の国会でも同事件が取り上げられました。安倍晋三首相は持論の「積極的平和主義」に集団的自衛権が含まれていると述べつつ、「テロのない社会をつくるため、積極的平和主義を進める」と語りました。集団的自衛権の行使をすすめると、テロのない社会が実現するかのような議論であり、耳を疑います。

米国への追従 テロの口実に
 野蛮なテロ行為はどんな理由でも許されるものではありませんが、米国の対テロ戦争に日本が協力するというこの間の対米追従がテロの口実に使われていたことは否めない事実です。
  「イスラム国」が伸長する土壌となったのは、米国によるイラク侵攻(2003年)でした。同侵攻とそのごの介入政策は10万人を超すイラク国民を殺害したといいます。反米感情を高め、過激思想を助長する結果になりました。
 この米国のイラク戦争に当時の小泉純一郎首相は早々と支持を表明。自衛隊を給水や医療支援などを目的にイラク南部サマワに派遣しました。そして04年、過激派組織「イラクのアルカイダ」は日本人男性を誘拐。自衛隊のイラクからの撤退を求め、男性を殺害しました。
 また昨年9月25日、安倍首相はシリア領内での「イスラム国」に対する米国などの空爆について理解を表明。「米国を含む国際社会の『イスラム国』に対するたたかいを支持している」(米ニューヨークでの記者会見)と述べて、「イスラム国」とたたかう米国らへの追従を際立たせたのです。そしてシリア入りした後藤さんから連絡が途絶えたのは10月下旬でした。

敵対関係を深めるのか
 安倍首相は2日の国会で、「イスラム国」への米国などの空爆に参加することについて「あり得ない」と否定し、後方支援も「ない」と退けています。
 しかし同政権は昨年7月、米国などの軍事行動に自衛隊が密接に協力・参戦する集団的自衛権の行使容認を閣議決定。自衛隊の海外での邦人救出を可能と示したほか、米軍などの軍事作戦への後方支援の幅も広げています。いずれも従来は、「国際紛争を解決する手段」としての武力行使になりかねないため、憲法9条で禁じられていた任務です。
 米国も「イスラム国」の打倒を目指す軍事作戦については、「3年から5年はかかるかもしれない」(1月30日、米国防総省のカービー報道官)と語り、強める意向です。同作戦が長期間のたたかいになり、日本の集団的自衛権の関連法制が整備されれば、米国からこれまで以上の軍事的協力を迫られる可能性は否定できません。
 安倍内閣が「テロ対策」として軍事的協力に踏み込むならば、「イスラム国」側との敵対関係をより深め、日本人は日常的に「テロの脅威」に直面しかねないのです。

子どもの幸せを―テロはじめすべての戦火をなくしたい
 「紛争地の子どもの実態を知って欲しい」。こう語って現場で倒れた後藤さん。民衆の日常を襲うすべての戦火が収まることを願っていたに違いありません。
 安倍政権に訴えたい。今回の事件を教訓とするならば、憲法9条をもつ日本として非軍事、人道外交を旗印に、テロを許さぬ立場を貫くとともに、「海外で戦争する国」づくりをきっぱりストップし、平和国家の道を進むべきです。(写真=きょう3日、関東地方は温かい日差しが降り注ぎました)