2016年10月15日土曜日

指定管理の綾瀬図書館を訪ねて              「図書館は使う側のもの」

  受付カウンターの壁に掲示された、国民の知る権利の尊重などをうたう「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会綱領)。大手書店の有隣堂(本店・横浜市)が指定管理者を務める神奈川県綾瀬市立図書館の光景です。設置者・自治体、運営管理・民間企業という公共図書館に、新しい取り組みが生まれています。

利用者フォーラムを開催
  綾瀬市立図書館では、利用者が借りる本の冊数に制限がありません。一度に何冊でも借りられ、絵本などを沢山借りる市民から好評を得ています。
  市の直営時から開設される郷土資料室には、地域の歴史や文化を伝える資料、綾瀬市関係の新聞記事のファイルなどが並びます。館内には寄贈されたすべての政党の新聞が置かれ、市民サークルの行事等を紹介する掲示板もあります。
  また、学校関係者などで構成する図書館協議会が設置されているほか、図書館利用者フーラムも開催。それぞれの愛読書の紹介に続き、「図書館に望む」と題した意見交換が行われています。
 こうした図書館運営には、「図書館は市民の財産を預かっているので、使う側のものです」(館長代行の藤巻美由紀氏=有隣堂社員)と、市民本位の理念が反映されています。

児童や若い世代の利用に創意工夫
  綾瀬市立図書館で特筆されるのは、児童・生徒や若い世代に利用を促す取り組みが意欲的に行われていることです。
  市内の全小学校には配本事業を実施。各クラスに2カ月おきに40冊ずつ本が届きます。国語の教科書に出てくる文学作品はすべてそろえられ、児童・生徒の読書感想画も各校一週間ずつ館内に展示されます。
  広報活動も積極的です。職員が作成したリーフレット「調べ学習ガイド」は、百科事典や専門書を見ることの大切さや使用方法をアニメ入りで紹介。18歳選挙権を得た世代に向けたリーフ「はじめましてセンキョとセージです」には、参考図書(谷口真由美著『日本国憲法(大阪おばちゃん語訳)』など)が書評付きで掲載されています。

図書館本来の目的に目配り
  同図書館では、本の収集、整理、保存という図書館本来の目的の遂行にも目配りが及んでいます。
  選書作業は、「前年度末の蔵書構成比から1%以内の増減」(市と有隣堂間の協定書)との基準に基づいて実施。2015年度の児童書ならば、14年度の蔵書構成比34.3%を軸に、33.3%から35.3%の範囲で購入されます。選書が特定の分野に偏る余地は皆無といえます。
  書架の整理は、毎朝3、40分、職員全員で行われています。「毎日、本を触っていると、どのジャンルに人気があるかないかがわかって、書庫の本との入れ替えもうまくいきます」(藤巻氏)
  また、同館の飲食ルールは、水分補給のみ本のない場所でOK、と厳格です。本の保存を大事にする立場が貫かれています。
  市民のための図書館づくりが進む綾瀬市立図書館。時代の要請に向き合う図書館といえるのではないでしょうか。
  (写真上=綾瀬市立図書館の児童コーナー、同下=同図書館発行のリーフレット等)