2015年10月27日火曜日

キライだったけど

 放課後の学習支援教室に、6年女子のSさんが初めてやってきました。テストの結果を見た母親から教室に行くように言われたといいます。
 取り出したのは算数の宿題。テーマは「速さの表し方」です。
 「算数は好き?」と尋ねると、「キライ」
 宿題が終わったところで、事前に準備していた動物「キリン、シマウマ、ダチョウ、チータ」の速さくらべの表(写真)を見せました。下手ながら書いた動物のカットとともに、少し興味がわいた様子です。
 
どっちかなぁ
 「キリンとシマウマはどちらが速いと思う?」 
 「シマウマ」
 「どうして?」
 「走った時間が同じ40秒で、進んだ距離はシマウマのほうが長いから」
 「そうだね。次にシマウマとダチョウとではどっちが速い?」
 「ダチョウ」
 「どうして?」
 「進んだ距離が同じで、走った時間はダチョウのほうが短いから」
 「いいね。ダチョウとチータとでは?」
 「どっちかなぁ」
 
秒速の”発見”
 「何かを出すと、はっきり比べられるんだけど」
 「秒速?」
 「そうそう。授業で習ったよね。1秒間あたりに進む距離で表した秒速をそれぞれ出すと比べられる。やってみよう」
 ダチョウの秒速は、665÷25=26.6(㍍)
 チータの秒速は、217÷7=31(㍍)
 「比べると、どっちが速い?」
 「チータだ」
 「うん。何㍍速い?」
 「約4㍍」
 「そうだね。じゃ、キリンとシマウマの秒速は?」
 キリンは、620÷40=15.5(㍍)
 シマウマは、665÷40=16.625(㍍)
 「4つの動物を速い順番に並べると?」
 「チータ、ダチョウ、シマウマ、キリン」

「こんど教室は」
 「いいね。じゃ、おまけに聞くよ。チータと人間とはどっちが速いと思う?」
 「それはチータだと思う」
 「本当かな。人間の速さを出さなくちゃ。オリンピックの100㍍競争で走る時間が10秒だとすると、その秒速は?」
 「100㍍÷10秒で、答えは10㍍かな」
 「そうだね。チータは人間より何倍速い?」
 「約3倍」
 「できた、できた。きょうのような勉強なら、算数に興味が持てそう?」
 「うん。こんど教室はいつですか」
 Sさんの表情が柔らかでした。(参考・遠山啓著「算数の探検 第四巻)

2015年10月25日日曜日

ラッカセイ効果

 近所の知人からラッカセイ(落花生)をいただきました(写真)。収穫したての旬の味です。「この地域でも採れるんだ」と思いながら口に運ぶと、風味が良く、甘みが広がりました。
 落花生の名前は、花が受粉して地面に落ち、地中で実を付けることから付けられたといいます。
 注目したいのは、栄養価が高いこと。多く含まれる「レシチン」という成分は脳の神経細胞の働きを活性化させるといわれています(「食べもの通信」11月号)。
 そのおかげか、昨日のカレーライスづくりは手際よく進み、「美味しい」との評価を得ました。

2015年10月23日金曜日

隣り合わせの海老名と座間の図書館 選書に大きな違い

市民の要望に沿う選書 座間 
 日が沈むのが早くなった秋の夕刻。神奈川県座間市立図書館の明かりが柔らかく輝いています(写真)。玄関を入ると、正面受付のカウンターで男性の職員が「こんばんは」と迎えてくれました。
 用件はリクエストしていた本の受け取り。同舘では新着図書の半年分を公式サイトで検索できます。それを見て未購入の新刊本をリクエストすると、「最初の読者」になるケースも。選書の方針に、「利用者のリクエストを優先」が貫かれているからです。
 今回も手にしたのは安保法制関係の新刊本でした。まっさらのページをめくるとき、「読みたい」との動機が適えられたことの充足感や、“知の発見”の喜びを覚えます。
 少し時間があったので雑誌コーナーへ。週刊誌、文芸誌、旅行雑誌、女性誌、スポーツ誌など定期的に発行される200冊余が並び、多くの市民が利用しています。今回、手に取ったのは、政治や経済などの動向を描く総合情報誌。書店では販売されていない、自宅郵送制の少し高額な雑誌であるため、図書館で閲覧できることは経済的にも助かります。

偏る選書 海老名
 一方、吹き抜けがあり、ジャズも流れる神奈川県海老名市立図書館。レンタルのツタヤが運営し、最近、不適切な本の購入でも話題になりました。筆者も公式サイトで新着図書の最近二カ月分を検索しました。
 驚きました。同館のジャンルで旅行78冊、料理79冊に対して、法律が4冊であったほか、政治・国際1冊、社会1冊、教育1冊にとどまっていたからです。国政の焦点、安保法制の関連本はこの間相次いで発行されていますが、前述の分類では一冊も購入されていないのです。選書に“偏り”や“不均衡”があることは否めない事実でしょう。
 加えて雑誌コーナーに並ぶ冊子は、旧市立図書館の168冊から4分の1の約40冊に激減。「雑誌は館内のツタヤ書店の雑誌を利用できる」(海老名市教委の担当者)と説明されていますが、同書店に並ぶ雑誌は限られているため、読むことのできなくなった雑誌がいくつもあります。
 
地域の文化力や教育力に影響
 図書館の大事な役割の一つに、国民の基本的人権の一つである「知る自由」の保障があります(日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」)。同権利の保障が図書館により差があるとなれば、地域の文化力や教育力に抜き差しならぬ影響を与えるというものです。
 海老名と座間は人口がほぼ同規模で、隣り合わせのまち。海老名市立図書館の選書をはじめとするあり方について、その検証が改めて求められています。

2015年10月13日火曜日

海老名「ツタヤ」問題で市民が市教委と交渉  避難訓練は緊急課題 

 神奈川県海老名市立図書館の運営について「海老名市政を考える会(笹川忠夫会長)は13日、市教育委員会と話し合いを行いました。
 同図書館は2014年度から5年間、レンタルのツタヤを展開する会社と組んで運営。海老名市からツタヤに指定管理料として約16億円が支払われます。しかし、改装オープン後、蔵書の不適切な購入に加えて、さまざまな不安や批判が市民から出されています。
 この日も、4階の幼児・児童向けフロアについて、避難訓練がまだ実施されていないことが参加者から明らかにされました。市とツタヤ側が交わした「業務仕様書」では避難訓練の実施が規定されており、「首都直下型地震や東海地震はいつ起きても不思議でない。大惨事を招かないためにも避難訓練は至急行われるべきだ」との訴えがありました。
 海老名「ツタヤ」図書館では、定期的に購入する雑誌が大幅に減るという問題も起きています。旧図書館では購入雑誌が158冊を数えていましたが、「ツタヤ」化後、文芸・健康・教育・スポーツなどの雑誌が軒並みカット。購入雑誌は以前の4分の1、約40冊まで後退しています。館内のツタヤ書店の雑誌(販売用)を見ることができるとの市教委の説明に、参加者は「それらの雑誌は借りることができない。図書館としてのバックナンバーもなくなる」と指摘。利用者が多い雑誌コーナーはサービスを拡充すべきだと訴えられました。
 また、図書館を利用することが困難な障害者等に対しては、ノーマライゼーション(障害のある人も、ない人と同様の生活ができるように支援する考え方)の一環として、図書宅配を無償実施することが「業務仕様書」で確認されています。ところが利用者に配布される海老名「ツタヤ」図書館の案内リーフには、無償との説明がいっさい記載されていません。リーフの改定を求める参加者に、市教委側は「ご意見を受け止める」と答えざるを得ませんでした。

2015年10月9日金曜日

海老名「ツタヤ図書館」への政策的提言

心配していたことが明らかに
  吹き抜けが広がるとともに、コーヒーの香りがただよい、軽やかな音楽が流れています。一見、大型のカフェや書店の雰囲気です。
  10月1日、リニューアルオ-プンした神奈川県の海老名市立図書館(写真)。市教育委員会の担当者は渋い顔ですが、マスコミから「ツタヤ図書館」と称されています。市民の税金11億円をかけて改修されたものの、管理・運営がレンタル大手・ツタヤを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などに市の「指定管理者」として委託されています。
風俗店案内の本も 
 海老名市立図書館の「ツタヤ図書館」化に対しては市民の中からいくつも心配の声が上がっていました。CCCが運営に関わる佐賀県武雄市の図書館で、CCCと出資関係のあった古本業者から中古本を蔵書として購入していたこともその一つです。
 海老名市民の懸念は的中しました。「ツタヤ図書館」のオープン前、「すべて新刊」として購入した約7千冊の本のなかに、古い雑誌や廃刊本も含まれていたことが市議会で発覚。伊藤文康教育長は「騒動になり、申し訳ない」(「読売」9月19日付)と陳謝せざるを得ませんでした。そのごも蔵書に海外の風俗店を案内する不適切な本が含まれていたことが判明。市教委は10月7日、これらの本を書棚から撤去することを決めました。武雄に続いて海老名でも選書の不透明さが浮き彫りになっているのです。
  公立図書館は本来、「国民の教育と文化の発展に寄与する」(図書館法第一条)ことを目的としています。学校教育や家庭教育の向上も援助し、市民にとっては「夢のある施設」といっても過言ではないでしょう。海老名の図書館がこうした目的に向かって運営されることを切望し、当面する課題を考えてみたいと思います。

1、図書選定を抜本的に見直す「選書委員会」に
  CCCの役員は武雄での不適切な選書について、「武雄市のときは、ど素人だった」(「朝日」10月9日付)と弁明しています。しかし公立図書館の運営に”ど素人”が乗り出すこと自体、見識が疑われ、責任が問われるというものでしょう。
  くわえて、海老名でも重ねた不適切な選書にその言い訳は通用しません。海老名の「ツタヤ図書館」の館長や少なくないスタッフは、武雄市図書館に勤務後、海老名に“移住”してきたからです。
 「ツタヤ図書館」の選書には抜本的な見直しが必要です。海老名市教委は近く指定管理者らを交えた選書委員会を設置する(神奈川新聞10月6日付)と言われていますが、抜本的な見直しを可能とする選書委員会の構成と実践が強く求められているのです。
市民のリクエストを柱に
 海老名の図書館はこれまで、市民から「新刊本は予約してもなかなか購入してもらえない」との声が上がっていました。他方、隣町の座間市(人口は海老名市とほぼ同規模の13万人)の市立図書館は、利用者から「予約すると、ほとんど応えてもらえる図書館」との好評を得ています。市民一人当たりの年間貸出冊数も海老名の4.5冊に対して、座間は7.7冊と、大きく上回っています。
 海老名、座間それぞれの選書に対する市民の評価の違いはどこから生まれているのか。考えられる大きな要因の一つは、海老名は選書がこれまでも民間業者に委託されていたのに対して、座間は選書が市職員である館長の責任のもと、市立図書館の独自の業務として自律的に行われていること、および選書の基準が座間では「利用者の予約(リクエスト)を極力優先する」(同図書館)が貫かれていることです。図書購入費(年額)は、海老名の約2000万円に対して、座間は約1600万円です。
 海老名の「ツタヤ図書館」は選書に際し、利益優先ではなく、市の基準が示す「市民の要望を考慮する」を文字通り確立するかどうか、厳しく問われています。

2、市民に親しまれ、災害時の避難も考慮した図書館へ
①幼児・児童フロアでの避難訓練は緊急課題
 海老名の「ツタヤ図書館」は、“一等地”である1階の大部分がツタヤ書店やコーヒーのチェーン店・スターバックスで占められています。結果、旧図書館の一階にあった幼児・児童向けの図書は4階へ。開館直後の日曜日、4階の同コーナーは親子づれで満杯状態になり、入場が制限されました。
 4階から下に降りる階段は一カ所のみです。非常階段はありますが、同階段に出るドアは施錠されているうえ、「4階の非常階段を使う避難訓練はまだ行っていない」(同図書館司書)と説明されています。
 首都直下型の地震はいつ起きても不思議はありません。「ツタヤ図書館」での幼児・児童を対象とする避難訓練は緊急課題です。
②利用の多い雑誌コーナーの拡充を
 各地の図書館で雑誌コーナーは利用の多いコーナーの一つです。旧海老名市立図書館でもゆったりとしたスペースが確保され、多くの利用者が訪れていました。ところが「ツタヤ図書館」の同コーナーは、「ビジネス」の案内板がかけられた部屋の狭い一角にあります。旧図書館で継続して購入された週刊誌の「サンデー毎日」「AERA」「ニューズウィーク」、スポーツ関係の「ナンバー」「ベースボールマガジン」、裁縫関係の「すてきにハンドメイド」などの購入はストップ。継続して定期購入する雑誌のなかに、スポーツ・健康・教育関係や女性誌などは皆無に近い状況です。これは、「雑誌コーナーにない冊子は館内のツタヤ書店で購入か発注を」との方針によるものでしょうか。
 今日、格差と貧困が広がるなか、家庭の図書購入費は縮小しています。「市民に役立つ」という公立図書館の役割はいっそう求められています。
③身体が不自由な人への宅配を無料に
 座間の図書館には、身体が不自由で図書館に来ることができない市民の自宅に本を無料で届けて、返却してもらう宅配制度があり、喜ばれています。こうした地域に根差す無料の宅配制度は最近、茅ヶ崎市立図書館でも企業とタイアップして開始されました。しかし海老名の図書館は宅配制度がありますが、有料のため、借りて返すさい、合計で千円かかります。
 高齢化社会を迎えるいま、気軽に利用できる宅配制度への期待は極めて高いものがあります。
④もっと利用しやすい館内に
 海老名の「ツタヤ図書館」には、書架と書架の間隔が狭いうえイスも置かれているため、車イスの障害者がほとんど通れないフロアがあります。
 CDコーナーは、「ジャンル別に置いている」(スタッフ)との説明ですが、アイウエオ順ではないため、CDを一枚選ぶ際もいくつもチェックしなければなりません。「邦楽あ」の表示の個所では、すぐ横にあるのは天童(てんどう)よしみのCDで、新垣(あらがき)勉はそれから約40枚後ろに置かれているという未整理状態です。
 朝日新聞の縮刷版は、1階と3階に分散(「スペースの関係で」〈スタッフ〉)しているうえ、1階の縮刷版は大人でもすぐ手が届かない上段にあります。
 郷土資料(海老名の郷土史や教育史など)はカギ付きのガラス書棚に納められています。利用する際はその都度、係員に開錠してもらわなければなりません。

3、「市民懇談会」開き、よりよい方向の探究を
 いま海老名市民のなかには、今回の図書選定をめぐる疑惑やこんごの図書館運営のあり方をめぐり、多くの疑問や意見が生まれています。また、全国2例目の「ツタヤ図書館」は全国的にも注目されています。よりよい方向を市民も参加して探究するために、市当局・館側と市民とが率直に話し合う「懇談会」の開催を呼びかけます。

4、図書館協議会の復活を
 海老名の「ツタヤ図書館」には現在、図書館法にもとづく図書館協議会が設置されていません。かつての市立図書館には設置されていましたが、「平成22、3年頃、廃止された」(市教委担当者)といいます。また、図書館運営の長期的ビジョンなどを示す「サービス計画」もありません。
 同協議会は図書館法によれば、図書館の行う図書館奉仕について館長に対して意見を述べる機関とされています。図書館の事業や運営が館側の意向だけではなく、市民の声も反映した形で行なわれることを、法的に保障する制度の一つです。
知る権利をもつ市民
 鎌倉市立図書館の図書館協議会は、学校教育の関係者、有識者、公募の市民で構成し、会議の議事録も作成されています。座間市の図書館協議会は、学識経験者、小中学校校長会、おはなし会、公民館運営審議会などの関係者6人で構成(任期2年。年4回ほど開催)し、市民の傍聴も可能です。
 海老名でも同協議会復活の声を広げ、設置のための市条例を制定しましょう。地域の教育と文化の発展に寄与する図書館を、知る権利をもつ市民の力でつくろうではありませんか。

 [参考]座間市立図書館は、「図書館の自由に関する宣言」(1954年に採択され日本図書館協会の綱領)を掲示しています。同宣言には、図書館が国民を特定の思想に導く機関として機能した戦前の歴史への反省が盛り込まれています。
 「図書館は基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。この任務を果たすために、図書館は次のことを確認し実践する。
 第1 図書館は資料収集の自由を有する。
 第2 図書館は資料提供の自由を有する。
 第3 図書館は利用者の秘密を守る。
 第4 図書館はすべての検閲に反対する。
 図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまでも自由を守る」