2015年4月29日水曜日

新ガイドライン 集団的自衛権の巨大な害悪浮き彫りに

日本の機雷掃海は先制攻撃
 日米両政府が改定した「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)。長文の分かりづらい文書ですが、最大の特徴は、自衛隊が他国の戦争に参戦する集団的自衛権の行使が初めて明記されたことです。
 その具体的な事例の一つは機雷掃海です。想定されているのはイランがオマーン領海にあるホルムズ海峡を機雷封鎖するという事態。安倍首相によれば、輸入原油の8割が通る同海峡の封鎖は「日本の存立を脅かす」行動であるため、武力行使の要件に合致するといいます。
 しかし、ここで留意したいことは、日本がイランから武力攻撃を受けているわけではないことです。停戦前の日本の掃海作戦はイランに対する先制攻撃に相当します。
 加えて米国自身、ことし2月6日の「国家安全保障戦略」で「必要なら一方的に軍事力を行使する」と述べた通り、先制攻撃の戦略を保持し続けている国です。
 新ガイドラインに基づいて米国と共同する掃海作戦が、日本に火の粉を呼び寄せる危険を高めることは必至というものです。

「殺す・殺される」戦場に
 国際紛争のさい、日本政府は本来、武力行使や戦争を放棄する日本国憲法9条にもとづき、外交交渉による事態打開などを探究すべきです。
 しかし、米国のイラク侵略戦争のさいも政府は、航空自衛隊をクウェートなどに、陸上自衛隊をイラク・サマワにそれぞれ派遣し、加担してきました。
 その結果、イラクから帰国後に自殺した自衛隊員は29人(15年2月末現在)に及びます。ストレス障害に苦しむ隊員も少なくありません。集団的自衛権が禁じられ、自衛隊の活動地域が「非戦闘地域」に限定されていたにもかかわらずです。
 新ガイドラインの下では集団的自衛権が行使され、「非戦闘地域」の枠組みも撤廃されます。自衛隊員は、自国防衛ならともかく、日本が攻撃されていないのに遠い国(ホルムズ海峡でいえば、日本から約1万1千㌔、地球4分の1周分離れている)に派遣されたうえ、「殺す・殺される」危険が極めて高い戦場に送り込まれることになります。その目的を探すことや自らの生命を守ることがどれだけ難しいことか。ここにも集団的自衛権行使の巨大な害悪や危険性が如実に示されています。

学習会や署名、対話等、列島の隅々に
 集団的自衛権の行使、および新ガイドラインの法的根拠となるのが、連休後に国会で審議される「戦争立法」です。同立法を許さないための学習会や署名、集会、街頭演説、対話・ネット活動など、あらゆるとりくみを列島の隅々に広げたいものです。(写真=団地の植え込みで、4月29日)

2015年4月25日土曜日

同じ空みなが笑顔で

 日ごとに木々の緑が鮮やかです。
 公園のキリシマツツジは赤い小さな花を咲かせていました。芝生広場では日差しを遮る白い上着をいっしょに被りながら食事をとる若いカップルの姿も。平和を見る思いがしました。
 同じ空みなが笑顔で見あげる日 松尾桃子
  (東京新聞4月25日付「平和の俳句」から)
  

2015年4月23日木曜日

沖縄新基地問題の新しい特徴

沖縄の内閣支持率28%
 沖縄をめぐる興味深い調査でした。「朝日」4月21日付の世論調査で、安倍内閣の沖縄県での支持率が28%と、全国の支持率44%を大きく下回っていたからです。
  同調査では米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を進める安倍政権について、移設反対の民意を受け止めていないとの回答(沖縄のみ)が77%と圧倒しました。内閣支持率の低落の大きな要因に、政権の民意無視があったことは明らかです。
 そもそも沖縄では昨年、名護市長選、県知事選、総選挙で、いずれも新基地反対を訴える候補が勝利していました。

沖縄の民意 全国に
  「朝日」の世論調査があっても安倍政権は、引き続き新基地建設の工事を進める方針です。
  その強硬な姿勢は、新基地建設への批判を全国にいっそう広げざるを得ないでしょう。13年4月の「朝日」の全国調査では辺野古移設について、「評価する」42%が「評価しない」33%を上回っていました。今回は「賛成」30%、「反対」41%と逆転しています。
 これまで移設計画をめぐっては米国内にも「沖縄は騒いでも、日本全体は気にしていない」との楽観的な見方があるといわれてきましたが、沖縄と同様の政権批判が全国的に広がりつつあるのです。

民意無視の代償 いっせい地方選結果にも
 今回の内閣支持率28%は確かに沖縄県での数値ですが、同2割台は従来、“危険水域”といわれてきました。福田内閣は支持率が2割を切った約4カ月後に総辞職。麻生内閣も約8カ月後でした。
 そして前述の通り、沖縄の民意が全国に波及しない保証など、どこにもないのが現在の政治状況です。
 いっせい地方選前半戦の結果でもそのことが裏づけられています。自民党は道府県議選・政令市議選で、前回比(4年前)で議席を増やしたとされますが、改選比(選挙直前)でみると計50議席減らしています。この後退の背景に、「海外で戦争する国」をつくる「戦争立法」が「安倍首相は怖い」との声を日々広げていることや、沖縄新基地問題での政権の民意無視などがあったことは容易に想像できます。
 沖縄新基地問題で安倍政権は、「主権が国民に存する」(日本国憲法前文)との民主政治の原則に向き合う姿勢こそ求められています。(写真=きょう23日の正午過ぎ、公園内の気温は24度ありました)

2015年4月17日金曜日

全力プレーと人間的魅力

超人的な集中力
 最近、共感を覚えたサッカー記事があります。サッカージャーナリストの大住良之さんが、プロの選手とは出場時間のなかで自分の持つ技術・頭脳・体力・情熱のすべてを出し尽くす、その超人的な集中力を発揮できる人だと述べた記事です(「東京」4月15日付夕刊)。
 現在のサッカーJリーグの試合では冗長なプレーが残念ながら度々みられます。大住さんの指摘する全力プレーであってこそ、広く感動を呼ぶのではと思っていたからです。

存在感を発揮
 試合後に余力を残さないということでいえば、個人的な好みからの評価かもしれませんが、J1鹿島の金崎夢生(かなざき・むう)選手はその努力が伝わってくる選手の一人です。攻撃の選手としてアグレッシブなプレーを終始持続させているほか、守備でも手を抜きません。現在チームの最多得点3ゴールを獲得し、今季初めて移籍した選手でありながら存在感をいかんなく発揮しています。

肩を組んで笑って撮ろう
 この金崎選手が最近話題になりました。鹿島と鳥栖の試合(4月3日)で、鳥栖のキム・ミンヒョク選手が金崎選手と競り合ったとき、足で顔を踏みつける行為により、公式戦4試合出場停止の処分を受けたのです。
 そのごキム選手は鹿島を訪ねて金崎選手に謝罪。このとき金崎選手は、「肩を組んで笑って撮ろう」との提案をおこない、「こんど対戦するときもお互いに全力でプレーしよう」と声をかけたといいます。
 なんと寛大で、器の大きさを感じさせる対応でしょうか。キム選手と笑顔で肩を組むその姿にも、さわやかさが伝わってきました。

心・技・体の充実を
 試合では全力プレーし、ピッチ外では人間的に振る舞う。こうした心・技・体を充実させたプロの選手がどんどん増えるならば、感動の輪も広がり、Jリーグの人気はもっと高まるはずです。(写真は4月16日の鹿島と柏の試合=NHKのスポーツニュースから)

2015年4月16日木曜日

沖縄の新基地は必要とされていなかった  最初の日米合意が示すもの

 4月8日の日米防衛相会談で、名護市辺野古への新基地建設について、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の危険性を除去するための「唯一の解決策」と、改めて確認されました。本当にそれ以外の道は皆無なのでしょうか。最初の日米合意では今日の内容と大きく異なっていたからです。

返還の願いに歩み寄る
 普天間基地問題の日米間の最初の合意は、19年前の1996年4月に交わされました。同12日、橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使(いずれも当時)は、普天間基地を「今後5年ないし7年以内」に日本に「全面返還」することで合意。沖縄にすでに存在している米軍基地のなかに新たにヘリポートを建設することを申し合わせたのです。つまり、ここには「返還」はあっても、「移設」や「新基地建設」の文言はなかったということです。
 市街地の中心にあって、地元市民に墜落事故の不安や騒音の被害を与え続ける普天間基地。96年の日米合意の背景には、日米安保体制を維持しつつも、沖縄県民の返還の願いに歩み寄る姿勢が双方に見られたことは否定できません。
 共同発表のさい、モンデール氏は、米軍基地のなかに新たにヘリポートを造る計画について、「兵力や基地の能力、即応性が低下することはない」と述べて日米軍事同盟に影響がないことを表明。橋本首相は、「沖縄のみなさんの強い要望に可能な限りこたえるものである」と述べて胸を張りました。

「オール沖縄」の広がりに
 この合意はそのご、普天間返還の条件に「県内での代替施設」完成が加えられ、当初のヘリポートとはまったく異なる恒久的な新基地の建設へと、変遷をたどります。
 しかしそれは結局、沖縄や全国の人びとの怒りを増幅させ、「オール沖縄」といわれるように、日米安保体制に賛成する人をも含めて新基地建設反対の声を広げています。
 この事態は日米両政府にとって大きな脅威です。オバマ政権の国防政策に強い影響力を持つシンクタンク、新米国安全保障センターのパトリック・クローニン上級顧問が最近の普天間問題に関わって、「米軍の安定的なプレゼンスを維持するためには日本社会の支持が重要だ。問題を深刻に受け止めている」(「毎日」4月12日付)と述べた発言にも示されています。
 日米両政府は普天間問題の打開策を、真剣に熟考する段階を迎えています。(写真=15日の日中は温かく、公園の気温計は19度を記しました)

2015年4月11日土曜日

タケノコ 自然の恵みに感謝

 近所の農家の直売所にタケノコがありました。「ことしもやってきたなあ」と旬の逸品を歓迎。
 でも農家のおばさんの表情はそれほど晴れやかではありません。
 「掘るの大変なの。崖にあるし。大きいのは掘るのに30分位かかるのよ」
 大事にいただかなくてはと、たっぷりの水とアク抜きの米糠を入れた大鍋でじっくりゆでました。
 冷めると皮をはぎ(写真)、薄切りして生食へ。掘りたてのため柔らかく、シャキシャキした食感とともに甘みもあり、春の躍動感さえ覚えました。
 農家のご努力と自然の恵みに感謝です。

2015年4月10日金曜日

どの子にも「わかった」「できた」の喜びを

 小学校の放課後、子どもの学習を支援する事業が自治体で取り組まれています。宿題や自習への相談・支援を通して、基礎学力の定着を図ることなどが目標です。
 学習支援員の話を聞くと、参加する児童は、早く宿題を終わらせて遊びたいなどの動機の子のほか、学習塾に経済的理由から通えない子も少なくないといいます。

 いま日本では6人に1人の子どもが貧困とされる水準で生活しています。
 勤労者の消費支出でも近年、子どもへの仕送り金、授業料、教養娯楽費、書籍代などが減少。寺島実郎・日本総合研究所理事長はこうした状況について、「日本人は学びへの余裕を失いつつある」(『世界』5月号)と指摘しています。

 憂慮すべき現実です。子どもにとって学ぶことやその習慣化は、将来、主権者としての役割を果たすうえで必要不可欠です。
  同時に子どもにとって、「勉強がわかった」「できた」が日々の喜びになることも事実です。
 長年小学校の教員を務めた友人はいいます。
  「教育の現場は昔と様変わりしています。でも子どものわかりたい、知りたいという欲求は変わらないと思います」

  校舎の片隅で子どものつまずきや困りごとにも応じる学習支援活動。子どもの笑顔が目に浮かび、明るい気持ちになります。

2015年4月5日日曜日

贈り主の気持ち

 両手に抱えきれないほどの花束をいただきました。
 黄色とピンクのバラがとても鮮やかです。白いフリージアからは気品ととともに甘い香りが漂います。贈り主の気持ちが伝わってきます。
 近所にもおすそ分け。「わっ、うれしい」と笑顔いっぱいになりました。

2015年4月3日金曜日

書評 なかにし礼『平和の申し子たちへ 泣きながら抵抗を始めよう』(毎日新聞社)

列車の床がミシン針のように
 書き出しは集団的自衛権の閣議決定日から記されています。まさに他国の戦争への参戦という同問題に反対する、骨太で心を打つ詩集です。
 その平和への深い思いは自らの体験に根差しています。
 旧満州の牡丹市(現中国黒竜江省)で生まれ、終戦を迎えたのは7歳になる直前。その4日前、ソ連軍が間近に迫り、日本陸軍の精鋭といわれた関東軍は市民を置き去りにして、軍用列車で逃走します。
 著者が紛れ込んだ同列車はソ連機の機銃掃射にさらされ、列車の床がミシン針のように打ち抜かれました。撃たれて、どくどくと血を流す軍人。死体を連れて逃避行はできないと、列車の窓から次々に捨てられる死体。中国人がそれらに群がり、裸にし、時計、指輪、そして金歯まではずされる光景が続きました。

平和の行動の中へ逃げよう
 本書はこうした戦争の残酷さについて、ありありと想像できる内容ですが、それに止まりません。
 いま戦争の恐怖はそこまで来ている、逃げるんだと主張する著者。命よりも大切なものはないからだといいます。どこへとの問いには、「平和を堅持する行動の中へ」と、抵抗=たたかいを勇気をもって呼びかけているのです。
 加えて、「戦後レジームからの脱却」(安倍晋三首相)に対して、「平和だった戦後のどこがいけないのか。戦後に対して失礼だ」(「毎日」2013年8月29日付夕刊)と的確に指弾する通り、著者にとって抵抗する相手も明らかであり、鼓舞されます。

幸せは命と自由を保障する平和
 「知りたくないの」「北酒場」「グッド・バイ・マイ・ラブ」など数々の名曲を生み出した著者。本書でも作品「赤い風船と白い男」はとくに心洗われる思いがします。
 再びがんになり、手のほどこしようがないと言われたら、著者は街角に立って少年や少女、お年寄りに風船を手渡したいといいます。そのときの衣装は白い雲がなによりも好きなので白、セリフは「幸せをあなたに」。風船の色は赤です。赤は命の色、フランス革命のとき、赤は自由の色でもあったからです。
 そうです。著者にとっての幸せは、命と自由を保障する平和なのです。
 私も泣きながら抵抗を始めたいと思いました。