日本のアイスホッケーは今回の全日本選手権が82回を数えたように戦前からの古い歴史があります。最近は女子チーム“スマイルジャパン”の活躍で注目されましたが、競技人口やファンの広がりに照らして、まだ“マイナースポーツ”の域を脱していないことは否定できない事実です。競技普及の先導的な存在であった企業チームは相次ぎ廃部し、維持にお金がかかるなどの理由から閉鎖されるリンクも少なくありません。
そうしたなかアイスバックスは、1999年に古河電工(創部1925年)が活動を停止したあと、4万人の署名を力に市民クラブとして栃木県日光市に誕生しました。翌年、資金難から廃部が決まるものの、存続署名は10万人に広がり、2001年に再スタート。現在、アイスホッケーのトップチームの多くが製紙会社などを後ろ盾にするなか、アイスバックスは日本で唯一のプロチームです。
活動理念の一つには地域密着を掲げ、スケート教室を数多く開いているほか、小中学校の訪問・交流も昨季は9回実施。ホームスタジアムではファンが熱心な応援を繰り広げています。
以前、元ヘッドコーチの村井忠寛さんが「地域の人たちや子どもに夢を与えるには、(大企業の)後ろ盾のないぼくたちのチームにしかできない大きなミッション(使命)だと思っています」と、そのやりがいを語っていたことは印象的でした。
アイスホッケーはスピーディーで迫力のあるスポーツです。今回の決勝戦でもスピードに乗ったカウンター攻撃や、氷上で身体も巧みに使うディフェンスなどは見事でした。
新しい境地に達したアイスバックスがそうした魅力を地域に根差しながらいっそう発揮し、アイスホッケーファンとスポーツ文化を大きく広げることを願っています。