2014年12月7日日曜日

「多様な働き方」は社会不安定化への道

  いまラジオから自民党のCMが流れ、安倍晋三首相が「アベノミクスで雇用を増やす」と話していました。 アベノミクスと雇用。今回の総選挙での首相の常套句です。同政権が働く人の利益に熱心であるかのような装いですが、実態は真逆です。

  雇用問題の重大性は、自民党が総選挙の公約に、「多様な働き方を妨げる規制の改革」を掲げていることにも示されています。これまでも多様な働き方などの美名のもとに、派遣やパートなど非正規労働者は増え続けてきました。10月も前月より10万人増え、すでに1980万人に達しています。全労働者5280万人に占める割合は37・5%に上昇。1985年は16・2でしたから、約30年で2.3倍になりました。
 
 
  非正規労働者の増大はまさしく政治によるものです。その典型は、1985年に自民党などにより成立した労働者派遣法と、そのご三回の改定のたびに派遣可能な業種が増え、派遣期間が長くなってきたことにあります。今回も総選挙後、解散で廃案になった労働者派遣法の改定案が「多様な働き方を」と称して再提出され成立すれば、派遣労働者はさらに増える可能性が高まります。企業が3年ごとに働き手を交代させれば、ほとんどの仕事を期間の上限なく派遣に任せられるというのがその内容であったからです。

 厚労省の調査でも派遣労働者の6割超が「正社員として働きたい」と望んでいます。
 なぜなら、派遣先の都合一つで契約を切られるなど、身分が不安定です。茨城県の金属加工工場で働く派遣社員の男性(37)。派遣の契約期間は3カ月で、更新される保証がありません。先が見えないなかで、ほしい車やパソコンは買えないといいます(「朝日」11月22日付)。
 賃金の低さも歴然としています。正規の人では2013年に受け取った平均給与が473万円だったのに対し、非正規は168万円にとどまり、約300万円の開きがあります。千葉県の女性(51)。派遣の仕事で4人の子どもを育て、入学金や修学旅行の費用はカードローンで借金、電気は何度も止められました。女性の活躍を強調する首相の言葉は遠く感じるといいます(「朝日」12月4日付)。

 雇用問題は、けっして非正規労働者などだけの問題ではありません。希望を持てない将来、子どもも含む貧困の広がり、少子化の深刻化などに結びついているように、日本社会の不安定化をはらむ重大な問題です。
 打開方向として、労働者派遣法を抜本改正し、派遣から正社員への道を開くことなどが求められています。大企業の膨大な内部留保の一部を非正規の正規化や賃金のアップに活用することも重要です。
 人間らしい働き方を追求し、国民の笑顔があふれる日本をぜひめざしたいものです。(写真は「朝日」12月7日付)