2014年10月10日金曜日

大学脅迫 どんな理由でも許されぬ

日本軍「慰安婦」報道にかかわった元朝日新聞記者が非常勤講師として務める北星学園大学に脅迫文が届いた問題。座視するわけにはいきません。同大学を支援する識者らの会が結成されたことは心強い限りです。

  今回、大学には講師の解雇を執拗に要求するとともに、「辞めさせないと学生を痛めつける」「ガスボンベを爆発させる」との脅迫がありました。講師の長女(高校生)に対しても写真を実名入りでネット上にさらし、「自殺するまで追い込む」などの攻撃を加えています。
  従って同問題をめぐる視点で目にした「背景に社会への不満も重なっている」には、違和感を覚えざるを得ません。

  なぜなら、仮に「社会への不満」があったとしても、言論の報道に対して言論で応えるのではなく、暴力や威迫で脅かす行為は、表現の自由や大学の自治をじゅうりんし、家族の生命さえ奪いかねない卑劣な攻撃です。脅迫罪、威力業務妨害にも相当する犯罪といっても過言ではないでしょう。
  また今回の行為は、「異質なものを重んじ」る(北星学園大学基本理念)などの精神にも示される民主主義の豊かな発展を脅かすものです。多少とも正当化するのではなく、毅然とした対応こそ求められています。

  そもそも日本には言論や表現が暴力的に抑圧されるという痛苦の過去があります。第二次大戦中の「横浜事件」では雑誌『改造』掲載の論文をきっかけに、中央公論社や朝日新聞社、岩波書店などの関係者約60人が逮捕され、4人が獄死。また、作家小林多喜二が拷問死するという弾圧もありました。こうした歴史を繰り返してはなりません。
 
  言論への暴力はいかなる理由があっても許されぬ―今回の大学脅迫問題ではこの思いをあらたにしています。