2015年8月1日土曜日

求めているのは米国同様のルール

 「グォーン」。耳に突き刺さる鈍い重低音。見上げた夏空に大型軍用機の姿がありました(写真)。7月31日の昼下がり、厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)近くでの光景です。
 同基地の騒音訴訟で東京高裁は7月30日、一審(2014年5月)と同じく自衛隊機の深夜・早朝の飛行差し止めや被害賠償を命じました。将来分の損害賠償も認められるなど、前進面がありましたが、米軍機の飛行差し止めの訴えは一審に続き今回も却下されました。

200万人が住む人口密集地
 東京高裁は米軍機の飛行差し止めを退けた理由について、米軍の基地使用権は日米安保条約などに基づいており、日本側が一方的に条件変更できないと述べています。日米安保条約の対米従属性を浮き彫りにするとともに、およそ説得力のある判断とはいえません。
 第1に、厚木基地での騒音被害の最大の原因は、米軍機の飛行にあります。現に自衛隊機の飛行差し止めを命じた一審後も、騒音回数はほぼ変わっていません。筆者も自宅で米軍機のいまにも落下するかのような異常な騒音に見舞われたさい、最寄りの市役所に問い合わせると、「すごい音でしたね。ここでも聞こえました」と驚かれた経験があります。米軍機が飛んでいる限り、騒音被害はなくならないというのが同基地の実態です。
 第2に、同基地には昨年7月以降、米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイが飛来するようになり、これに伴い空中給油機など関連機の飛来も増えています。基地機能の強化とともに、部品落下や墜落等の危険が増しているのです。
 第3に、米国自身、自国の市街地で軍用機を飛ばすようなことはしていません。厚木基地の周辺は200万人余が住む人口密集地です。ここでの飛行差し止めの訴えは一方的どころか、米国同様のルールを求めるという対等の要求です。
 厚木基地周辺の住民は健康や安全な生活を渇望しています。司法も政府もこの人間的な願いに背を向けて、独立国とはいえない姿を見せ続けるならば、その行き詰まりを一段と深めざるを得ないでしょう。