2016年7月16日土曜日

「自由通路」に自由を

全国初の禁止命令書
  これでは息苦しい街にならないか心配です。
  神奈川県海老名市の駅前(写真)で2月末、ある宣伝活動が行われました。通行の邪魔にならない個所でマネキンに扮して静止し、声を出さずに「アベ政治を許さない」などのプラカードを掲げる「フラッシュモブ」といわれる行動です。集団で威力を示すデモや集会などとも形態の違う活動であり、当日も市民からの苦情はなかったことが市から認められています。横浜駅前で行われた同趣旨の取り組みは、神奈川新聞に「スタイリッシュさで目を引く」と紹介されています。
 
 ところが内野優・海老名市長は3月28日、参加した一市議(「えびな・九条の会」会員)に、海老名駅自由通路条例に違反すると断じ、今後従わない場合は科料(あやまち料)に処すとの「命令書」を下しました。自由通路に関わる条例を制定する自治体は全国に約40ありますが、今回のように科料の制裁をほのめかして「命令書」を発した自治体はこれまで皆無でした。

狙いは政権批判封じ
 なぜ市長は異例といえる過剰な規制を行ったのでしょうか。市側は理由の一つに、「安倍政権に対する政治活動」であったと市議会で答えています。政権批判を封じる政治色の濃い命令であったことが吐露されているのです。自治体が市民に「政権批判はご法度」を押し付けるならば、公平・公正を逸し、公務員職権濫用罪にも該当し得るといっても過言ではないでしょう。
 
 海老名の自由通路条例では物品の配布等を承認の対象とする一方、集会やデモが承認の余地なく、一律に禁止されています。今回の取り組みも集会やデモに該当すると判断されたわけですが、前述の通り、従来のデモや集会の形態とは異なっていたことに加え、国の道路交通法の判例では交通に著しい影響を及ぼす行為でなければ、届け出が不要とされているのです。
 
 そもそも集会やデモなど表現の自由は、憲法が保障する通り、民主主義の根幹です。今回の禁止命令書と海老名市の条例は、道交法や憲法に照らしても重大な瑕疵(かし)があります。
  海老名市の市議らは6月16日、市に対して命令書の取り消しなどを求める訴えを横浜地裁に起こしました。市民が街に出て政治的主張をすることは当たり前という、市民社会の成熟をいっそう前に進めたいと思います。