2015年10月23日金曜日

隣り合わせの海老名と座間の図書館 選書に大きな違い

市民の要望に沿う選書 座間 
 日が沈むのが早くなった秋の夕刻。神奈川県座間市立図書館の明かりが柔らかく輝いています(写真)。玄関を入ると、正面受付のカウンターで男性の職員が「こんばんは」と迎えてくれました。
 用件はリクエストしていた本の受け取り。同舘では新着図書の半年分を公式サイトで検索できます。それを見て未購入の新刊本をリクエストすると、「最初の読者」になるケースも。選書の方針に、「利用者のリクエストを優先」が貫かれているからです。
 今回も手にしたのは安保法制関係の新刊本でした。まっさらのページをめくるとき、「読みたい」との動機が適えられたことの充足感や、“知の発見”の喜びを覚えます。
 少し時間があったので雑誌コーナーへ。週刊誌、文芸誌、旅行雑誌、女性誌、スポーツ誌など定期的に発行される200冊余が並び、多くの市民が利用しています。今回、手に取ったのは、政治や経済などの動向を描く総合情報誌。書店では販売されていない、自宅郵送制の少し高額な雑誌であるため、図書館で閲覧できることは経済的にも助かります。

偏る選書 海老名
 一方、吹き抜けがあり、ジャズも流れる神奈川県海老名市立図書館。レンタルのツタヤが運営し、最近、不適切な本の購入でも話題になりました。筆者も公式サイトで新着図書の最近二カ月分を検索しました。
 驚きました。同館のジャンルで旅行78冊、料理79冊に対して、法律が4冊であったほか、政治・国際1冊、社会1冊、教育1冊にとどまっていたからです。国政の焦点、安保法制の関連本はこの間相次いで発行されていますが、前述の分類では一冊も購入されていないのです。選書に“偏り”や“不均衡”があることは否めない事実でしょう。
 加えて雑誌コーナーに並ぶ冊子は、旧市立図書館の168冊から4分の1の約40冊に激減。「雑誌は館内のツタヤ書店の雑誌を利用できる」(海老名市教委の担当者)と説明されていますが、同書店に並ぶ雑誌は限られているため、読むことのできなくなった雑誌がいくつもあります。
 
地域の文化力や教育力に影響
 図書館の大事な役割の一つに、国民の基本的人権の一つである「知る自由」の保障があります(日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」)。同権利の保障が図書館により差があるとなれば、地域の文化力や教育力に抜き差しならぬ影響を与えるというものです。
 海老名と座間は人口がほぼ同規模で、隣り合わせのまち。海老名市立図書館の選書をはじめとするあり方について、その検証が改めて求められています。