2015年6月24日水曜日

絵本『あなたこそ たからもの』と安保法案

 近刊の憲法の絵本『あなたこそ たからもの』(文・伊藤真、絵・垂石眞子、大月書店)を読みました。憲法を子どもに手渡すきっかけにというのが刊行理由ですが、国政の焦点である安保法案の違憲性をわかりやすく示す冊子でもあります。

立憲主義に背を向ける「安保環境」論
 安倍政権は、安保法案の根幹にあたる集団的自衛権行使の根拠に、安全保障環境の変化を持ち出しています。集団的自衛権とは日本が攻撃を受けていないのに、自国防衛と称して他国に武力行使することです。
 絵本は、こうした政府の主張に照らして、憲法にもとづく政治=立憲主義の意義を指摘します。
 「わたしたちが、えらんだだいひょうも、いつも、ただしいことをするとは、かぎらない。だから、ほんとうにたいせつなことをけんぽうに、書いておくことにしたんだ」
 まさに「安全保障環境の変化」なるものは政府の判断です。環境が変われば自衛権の範囲が広がったり狭まったりするというのでは、法の支配がなくなります。 
 従って絵本は「たいせつなこと」=平和のあり方について、こう説明します。
 「にっぽんはむかし、せかいのくにぐにとせんそうをしたんだよ。あいてのくにのひとを、たくさんころしたし、ひどいこともした。もちろん、にっぽんのひとたちも、たくさんしんだ。せんそうは、かってもまけても、ひとをころす。…だから、せんそうにまけたあと、けんぽうにかいた。『もうせんそうはしません。ぐんたいもいりません』」
 そうです。憲法は、軍事力で国民を守ることはできないとの反省に立って、戦争と武力行使を永久に放棄し、軍隊や交戦権を認めていません。日本は海外で武力行使するうえで必要な道具も憲法上の資格もない以上、集団的自衛権など、もともと行使できるわけがないのです。そして、その立場にたつ平和国家としての70年間の歩みは、世界から信頼を得る源になってきました。

戦争こそ最大の人権侵害
 絵本は憲法の値打ちについて、とりわけ「個人の尊重」(13条)に光をあてています。
 「ひとりひとりに、かけがえのない いのちとこころがある。ほかのだれともくらべられない。あなたは、せかいでたったひとりの、たいせつなそんざい。あなたこそ、たからもの。それをわすれないで」
 ここから浮き彫りになるのは、いのちや権利を根こそぎ奪う戦争こそ最大の人権侵害であるということです。
 「海外で戦争ができる国」をめざす安保法案。人間の尊厳を守るためにも、反対世論を広げることがいよいよ重要です。(写真=絵本『あなたこそ たからもの』)