一つ、気がついた。通常は縫い合わせている脇下の両サイドに縫い目がない。なぜだろう?。製造元の会社に電話をかけると、応対したTさんの説明が丁寧だった。
丸い円柱状の反物をサイズごとに裁断しているという。反物のロスが少なくて済むし、縫い目がないほうが肌に触れたとき、ストレスがかからず、着心地もよいはずと。加えて、襟元が「ダラーと伸びないように」縫っていることもこだわりだと話す。
同社のTシャツは「日本製の原点」が売りだ。1950年代半ば、まだTシャツという呼び名が広く知られていない時代、「色丸首」というTシャツの先駆けを縫い上げた。
きっかけは、空襲で焼け野原になった東京に駐留した米軍の兵士が着ていたシャツだった。それまで下着とされていたシャツだが、「染めると、外出着になる」との発想が生まれたという。大手との競争もあり、「つらいときもあった」が、実直に日本製Tシャツの専門店としてモノづくりに励む。
「最近は日の目がちょっこと見えたかな」と話すTさんに、ラジオ体操などに着て行くと体を動かしやすいですよと伝えた。「ありがとうございます。こんど店にぜひお寄りください」と明るい声が返ってきた。