小さな天窓からは明かりが差し込み、浴槽に湯が勢いよく注いでいた。水を入れても熱く、入ったり上がったりを繰り返した。
そうこうしていると、同年代と思われる男性が浴室に入ってきた。狭い浴室のこと、当然のごとく挨拶を交わし、話が弾むのに時間はかからなかった。
男性は埼玉からキャンピングカーでやってきていた。ゴルフをやりながら温泉巡りをしているという。頚椎(けいつい)の具合いがあまりよくないと語るので、当方にも似た症状の身内がいると明かすと、どこそこの病院に通うといいと、親切にアドバイスしてくれた。
帰りのバスの時間が迫ってきたので、失礼して浴室から出たが、先の男性も上がってきて、また“頚椎談義”となった。
共同浴場の名も知らぬ裸同士ではおよそ地位も職業も関係がない。対話が進み、フレンドリーな関係になるのがうれしい。上州はある温泉場での出来事だった。