2015年1月18日日曜日

日中韓の絆を探る  岡田武史元監督らが発言

 日本、中国、韓国の絆をサッカーの分野から「再発見」するセミナーが16日、東京都内でありました。
 公益財団法人・日本国際交流センター(理事長・大河原昭夫元住友商事総合研究所所長)の主催。パネリストの岡田武史元サッカー日本代表監督、池田誠剛元サッカー韓国代表フィジカルコーチ、ユ・サンチョル元サッカー韓国代表選手はかつて元横浜F・マリノスの監督、コーチ、選手の関係でもあり、終始、和やかな雰囲気で進行しました。参加者は約150人。

信頼や尊敬の社会は到来する 岡田氏
 中国のサッカーチームの監督を2012年から2年間務めた岡田氏。中国から帰国するさい、空港でサポーターから帰らないでほしいと懇願されたことや、同席するユ氏が尊敬する仲間であることを紹介し、「こんご、信頼や仲間意識、尊敬など目には見えない資本を大切にする社会がきっと来るのではないか」と語りました。
 尖閣諸島をめぐる日中間の対立にもふれて、一人っ子政策の中国では戦場に子どもを送りたいと思っている人はほとんどいないと指摘。氏の活動の基本は3人の子どもに残せるものを探すことにあり、その具体例として環境の保全や70年間戦争がなかった社会などを挙げました。
 また、四国リーグ・FC今治(愛媛県)のオーナーを昨年から務める氏は、中国、韓国の少年チームを招いた国際大会を今治市で開く予定であることも明らかにしました。

人間として手をつなぐこと 池田氏
 池田氏は子どものころ、地域に朝鮮人の部落があり、父親に「国籍や皮膚の色で差別するな。人間として手をつなぐこと」と言われて育ったと発言。韓国でのコーチ時代、日韓戦でホン・ミョンボ監督が選手に「日本をリスペクト(尊敬)しよう。フェアプレーで勝つことで我々はもっと成長できる」と激励したことを紹介しました。
 また、ロンドン五輪(2012年)の3位決定戦・日本対韓国戦で韓国が勝ったさい、氏が日本の一部の人から「売国奴」などと、心ない誹謗中傷を受けたことを振り返りながら、「日韓が切磋琢磨してアジアサッカーのレベルを上げたい。私は日韓の友好を信じている」ときっぱり語りました。

経験せずして語るな ユ氏
 Jリーガーとしても6年間プレーし、現在は韓国の大学チームの監督を務めるユ氏。初来日した当時は日本に対する反感もあり、仲良くなる気持ちを持っていなかったと告白。日本人選手が会話を交わしていると、自分の悪口を言っているのではと考え、ストレスになったといいます。
 しかしアスリート(運動選手)としてケガも辞さない懸命なプレーを続け、心も開くなかで情も厚くなり、仲の良いチームメートが一人、二人と広がったと発言。現在は横浜が第二の故郷だと述べ、「経験せずして簡単に語るな」が私の人生訓だと話しました。子どもによりよい世の中を譲り渡したいとも述べました。

 セミナーで3氏の話を聞いたのち、いまアジア・カップで試合中の日本はもとより、中国や韓国のチームにも親近感を覚えている自分に気づきました。日中韓の友好の絆を強める3氏に感謝の気持ちが湧いてきました。私もきょうのテーマの重要性を多くの人びとに広げていきたいと思います。写真は(左端)ユ・サンチョル氏、(左から3人目)池田誠剛氏、(同5人目)岡田武史氏=1月16日夜、東京・港区で