2020年12月14日月曜日

「政治上の主義」を問う

  地域の九条の会に、市内の各種団体協議会(任意団体)から「規約に触れるので、協議会から辞退を」との通告があった件で、このほど双方の話し合いが行われました。

●手続き上、問題があった

話し合いでは、事前の聞き取りもない一方的な通告であったことや、九条の会が協議会加入後の約10年間、友好的な関係を築いてきた経緯などが明らかにされ、協議会側は「手続き上、問題があった」と、その瑕疵(かし)を認めざるを得ませんでした。

●「政治上の主義に基づく団体」ではない

「規約に触れる」との議論では、九条の会が「政治上の主義に基づく団体」との条項に該当すると説明されました。

この条項は、市の施設である市民活動センターの設置条例(団体の登録条項)や市の市民活動推進補助金の要綱にも記されています。「公益性」があるとして市から補助金を受ける協議会だけに、今回の通告は市の施策に影響しかねない問題でもありました。

当地の九条の会は、九条を中心に日本国憲法を守る一点で力を合わせることを目標とし、会則に思想・信条・政党支持の自由を明記しています。今日の活動でいえば、九条改憲問題をはじめ、学術会議任命拒否問題、コロナの感染拡大防止、医療費負担増、沖縄・辺野古問題などを憲法上の視点から取り上げています。当然、政治性を帯びますが、それを特定の政党のために利用するようなことは禁じ、選挙に会として参加することもありません。

こうした説明を受けた協議会側は、「九条の会は『政治上の主義に基づく団体』に関係しないと感じた」と述べざるを得なく、今回の「辞退」通告を取り下げると言明しました。

 

●日本国憲法--国家の基本法

そもそも「政治上の主義」とは、〇○主義といわれるように、政治に関わる特定の考え方などを指していると想定されますが、抽象的な文言にほかなりません。

他方、九条の会が活動の柱とする日本国憲法は、国家の基本法です。書き込まれているのは、「日本社会が中長期的に守り続けるべき原理」(長谷部恭男・早稲田大学教授)です。

例えば、国民の権利では、思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)、職業選択の自由(22条)、健康で文化的な生活の権利(25条)、子どもの教育を受ける権利(26条)、労働者の団結権・団体行動権(28条)などが記されています。こうした社会権を広く保障する日本国憲法が、「政治上の主義」といった特定の分野の考え方に該当しないことは明々白々です。

だいたい、当市でも市役所の職員は採用時、「日本国憲法を尊重・擁護します」と記す宣誓書を提出します。市役所が「政治上の主義に基づく団体」でないことはだれの目にも明らかでしょう。
 

●深まった連帯感

今回、地域の九条の会は、協議会の通告を役員間だけの問題にすることなく、会員にも知らせました。見識あるコメントが次々に寄せられました。

「九条の会は『政治色を強めている』といった発言は言い過ぎです。そういった発言する方が『政治色』に染まっているのでは…。今の世相から、戦争に向けての諸準備が進んでいるのは明らかです。それら一つひとつがいま小さな事象でも、総合的になれば体制が出来上がります。今これを防がなければとんでもないことが起きるのではと、みんなそれを危惧しています」

「『9条を変えたい人もいる』との言い分ですが、なぜ『変えたい人』が優遇されるのか。それこそ政治的な判断です。両者の意見を発信しあうことこそ大事です」

「社会的な問題について行動するのはだめというならば、福祉や環境の問題に取り組む団体も外されてしまう。日本国憲法の前文には『(日本国民は)政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し』とある。九条の会はこの線に沿っている。生きがいとするには実にまっとうだ」

これらのエールに鼓舞され、「仲間といっしょにたたかう」との連帯感を深めたことはいうまでもありません。