2018年8月10日金曜日

海老名市のごみ有料化―いくら何でも急ぎすぎ

  神奈川県海老名市から配られた、ごみ有料化の基本方針案について、意見を3点、述べます。
  1点目。方針案に貫かれている考え方は、有料化することで分別の動機付けが働き、減量化が進むというものです。これは、負担を強いることで意識を変えさせるという強権的なやり方であり、その底流には市民を見下す姿勢があるといわなければなりません。
 しかも、有料化の1㍑当たり2円自体、全国的にも高い。45㍑のごみ袋を週2回出すことで計算すると、年間では4860㍑になり、金額にして年9720円の出費増です。この額をどう見るか。いま、野菜を買うときも5円でも10円でも安いものを探すという庶民にとっては、けっして低額ではありません。

  2点目。基本方針案には「ごみの減量化策の効果が頭打ち」と記されています。減量化策がギブアップしたので有料化は仕方がないという主張ですが、同じ方針案に「剪定枝(せんていし)の資源化」が記されています。これはこんごの施策としての位置づけです。減量化策がまだ頭打ちなどしていないことを自己暴露しています。
 全国には有料化しなくても、減量化策で成果をあげている自治体があります。県内でも三浦市は「ごみダイエット大作戦」と銘打って、一般ごみへのプラスチックの混入防止や生ごみの水切り徹底を進めています。
 水切り、つまり水分率が高いと、焼却の際、水の蒸発に熱が使われ、余計にエネルギーが必要になります。処理費用も高くなる。そこで三浦市は、野菜などは要らない皮などをむいてから洗い、要らない皮などはぬらさないようにすることなど、減量化策を事細かに呼びかけています。
  こうした結果、三浦市ではゴミの量が減少しています。平成23年、ごみの量は1万152㌧ありましたが、平成29年度は8154㌧になった。つまり6年間に2000㌧減った。20%減という大きな成果をあげています。

  3点目。ごみの減量化には、市民への啓発が重要であることは論を待ちません。しかし、海老名市のこれまでの啓発活動は非常に不十分です。
  この点で、秦野市の「秦野市ごみ減量通信」(写真)は具体的な内容で、参考になります。同通信は、平成18年からことし30年まで42号発行されています。一年に3、4回の割合で、草類(くさるい)の分別収集などを呼びかける通信が、自治会の回覧版で市民に届けられている。海老名市もこうした草の根型の啓発活動に学ぶべきです。

  結論として、海老名市の「有料化を来年秋頃に」という方針はいくらなんでも急ぎすぎです。ごみの集め方でも、集積場に持っていく出し方から、一棟ずつ収集する戸別収集に変えるといいますが、これは労力が多くなり、経費もかかることを市も認めています。ところが、市は「集めるルートが決まっていないので」として、その経費増さえ公表していません。有料化という結論ありきだからではないでしょうか。
  市は、有料化に踏み出す前に、減量化策を知見を集めてよく練ること、市民への啓発にもっと力を入れること、これらのことを最優先すべきです。