それは、戦争ができる国への道を進みつつも、日本国憲法を気にしなければならないという奇妙な光景でした。
3日放送のNHK番組で、安倍政権が狙う安全保障法制について討論されたさいのことです。自民党の高村正彦副総裁ら与党が米軍などを「後方支援」する活動について、海外での武力行使を禁じる日本国憲法9条にふれつつ、武力行使と一体化するものではないと繰り返したからです。
「武力行使ができないという、国際的に非常に珍しい憲法を持っているなかで、武力行使と一体となった活動はできない」(高村氏)
しかしこの言明通りならば、今回の安保法制は成り立たないはずです。
戦闘現場で支援活動
なぜなら安保法制の他国支援にはこれまでとは違う問題が二つあり、いずれも米軍などの武力行使と一体化せざるを得ません。
一つは自衛隊の活動地域の制約が外されていることです。これまでは支援活動が武力行使と結びつかないように、「非戦闘地域」に限ると設定されてきました。
今回はこの枠組みが撤廃され、自衛隊が幅支広い支援活動をできるようにと、新たに「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」に変えられています。つまり、戦闘が現瞬間行われていなければ、戦闘現場でも支援活動が可能になったことを意味します。
これは極めて危険なことです。自爆テロや仕掛け爆弾が飛び交う現在、戦闘が瞬間的に行われていなくても、いつでも戦闘現場になりうるからです。
武器・弾薬の輸送も
もう一つは支援内容が拡大していることです。自衛隊はこれまで海外で施設復旧などの支援に参加してきましたが、昨年7月の閣議決定によれば、新たに「補給、輸送など」の実施が明記され、武器・弾薬・食糧の補給や輸送なども可能とされているのです。
これらはいずれも米軍等の武力行使を支える活動にほかなりません。その結果、「(相手側にとっては)弾薬を輸送する部隊を攻撃する方が、戦闘部隊への補給路を断つため、はるかに効果的な作戦となる」(柳澤協二・元内閣官房副長官補)のです。
安保法制では自衛隊が支援活動中、攻撃を受ける場合は支援活動を「休止し又は避難する」としていますが、そのような行動をとれば、前線の部隊は弾薬や食糧、燃料が切れてしまい、崩壊しかねません。「友軍から見れば寝返り同前の行為」(軍事ジャーナリストの田岡俊次さん)との指摘もあります。応戦せざるを得ないというのが、戦場での実際の展開というものです。
ドイツの教訓
ドイツはアフガニスタンに復興支援など「後方支援」に限定した派兵をおこないましたが、毎日のように戦闘に巻き込まれ、計55人の犠牲者を出しています。
日本でも集団的自衛権行使で米軍の「後方支援」に派兵されるならば、今回の安保法制の実態からもその武力行使と一体化し、同じような危険に直面しかねません。
安保法制に反対する世論と運動をいっそう広げたいと思います。(写真=青空のもと、鯉のぼりの連凧がおこなわれていました。5月3日)