本音が出たと思いました。安保法制=戦争法案についての記者会見(14日)で安倍晋三首相が、自衛隊はこれまでも危険な任務で1800人が殉職していると平然と述べたからです。戦争法案の行使で自衛隊員から犠牲者が出ても、“仕方がない。愛国心の表れだ”などとかわす底意が見えたのではないでしょうか。
これまでも同首相は日米安保体制を強化するために自衛隊が“血を流す”ことを当然視してきました。自衛隊員の命の重さなどなんとも思っていないのではないでしょうか。
戦争法案で一気に増す戦死の危険
今回の戦争法案では、日本が攻撃を受けていないのに、先制攻撃も辞さない米軍などを武力で守る集団的自衛権の行使を初めて容認しました。日本本土がテロ攻撃を受ける危険のほか、自衛隊員が戦死する危険が一気に高まっています。
実際、これまで自衛隊の派遣先は「非戦闘地域」とされてきましたが、今度はその枠組みさえなくし、戦闘が予想される地域でも活動できるようにしました。武装集団から襲撃を受けている他国軍を、武器を使って支援する「駆け付け警護」まで認めています。
駈け付け警護とは白兵戦(近距離での銃撃戦)を意味します。イラク戦争では同警護や民家の捜索などで米兵4000人が戦死。世界最強と言われる米海兵隊でさえ一番嫌がる作戦です(野田順康・西南学院大教授)。関東地方の陸上自衛隊員たちが戦争法案の駈け付け警護に、「ふざけんな!」(「東京」15日付)と口をそろえたのにも理由があるのです。
9条下では本来、戦死者は出ない
戦争法案に対して日本国憲法9条は、武力行使も戦争も戦力も放棄し、他国と穏やかに話し合って仲良くすることを決めています。こうした平和の立場はけっして日本だけのものではありません。1976年締結の東南アジア友好協力条約(TAC)は武力行使の放棄や紛争の平和的解決などを掲げ、すでに57カ国、世界人口の72%が参加する平和の流れに成長しています。
日本の政府も長年、憲法9条に縛られ、日本が攻められたときだけ反撃する「専守防衛」を掲げてきました。当然、自衛隊も、見も知らぬ外国へ行って殺し殺されるのは仕事ではありませんでした。現に自衛隊は戦後70年間、一人も殺さず、一人の戦死者も出していません。「9条で一番守られているのは自衛隊員」と言われてきたことにも根拠があります。
しかし9条を徹頭徹尾敵視し、海外で戦争ができる国に突き進む安倍首相。「個人の名誉心でやっている」(山崎拓・元自民党副総裁、『週刊朝日』3月6日号)と指摘される通り、国民的団結で平和をめざす立場とも無縁です。日本のリーダーにもっともふさわしくない人物であることが改めて示されています。