主人が外に出て店じまいを始めていました。急いで店内に入ると、年代物のショーケースに数種類のかまぼこが並べられていました。一つひとつに手書きの説明カードが添えられ、手塩に掛けた製品であることが伝わってきます。「人気No.1」と書かれたカードには金目鯛入りとありました。価格はそれほど高くありません。
金目鯛は脂肪分の多い白身の深海魚。伊豆地方の金目鯛は漁場が近いため鮮度もよく、旬は冬といいます。
「申し訳ありませんが、金目鯛のかまぼこ、切っていただけますか」
不躾と思いながらも食べたい一心で切り出すと、主人はうなずき、店の奥の工場風の一室に。しばらくすると、女性が切り分けたかまぼこを手に現れました。プラスチックのパックに入れ替えてくれ、「爪楊枝も入れておきますね」。こまやかな心配りでした。
金目鯛かまぼこは歯応えのある食感に加え、味の旨みと濃さをしっかり堪能できました。併せて同店で購入した天城産のわさび漬けも生わさびの茎や根をカリカリと味わえるほど新鮮でした。