失業し、求職活動をする知人の話です。
「職業安定所で求人票の検索機を操作していると、隣に30歳前後の男性が赤ん坊を抱えてやってきた。立ったまま、赤ん坊をあやしながら1時間以上、求人票を検索していたけど、結局、求人票を一枚も印刷しないで帰っていったよ」
赤ちゃんを抱えていた男性は、失業し、希望する仕事がなかなか見つからなかったのでしょうか。
一倍を大きく下回る正規の求人
「求人倍率は高水準」と胸を張る安倍晋三首相。しかし一人に何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率は正社員に限ると、14年平均で0.66倍にとどまります。
求人は職種により差があるのも現状です。建設や輸送関係などは多いものの、事務職などは一倍を大きく下回っています。ちなみに近隣の職安に尋ねると、事務職の直近の正規の場合、求人数323人、求職者数1206人で、有効求人倍率が0.27倍と低迷しています。
非正規を大量に増やす派遣法改悪案
仮に仕事が見つかっても非正規の場合、賃金や労働条件は劣悪です。仕事内容は正規と同じでも賃金に大きく差があり、定期昇給も賞与もないというケースが少なくありません。「契約は半年ごとの更新で、失業しないか不安がつきまとう」と語る人が大勢います。
加えて、いま政府が国会に提出しようとする労働者派遣法改悪案は、「原則1年、最大3年」という派遣受け入れの期間制限を事実上なくすことで、3年ごとに人を代えれば、無期限に派遣社員を使い続けられる仕組みとなっています。これでは正社員の派遣社員への大量の置き換えが進むことは避けられません。
勤労権の保障は政治の責任
職を自分の意思と違う形で失うと、収入が絶たれることはもちろん、人との日常会話がほとんど途絶え、孤独感さえ味わうといいます。働くことは、収入を得ることのほか、社会への貢献という意味があります。もともと勤労は憲法27条が保障する国民の権利です。
政治の責任で非正規から正規社員への流れをつくり、失業中の人がこの春、社会に出て胸を張って働くことができるように、その条件をいっそう広げるべきです。