心配していたことが明らかに
吹き抜けが広がるとともに、コーヒーの香りがただよい、軽やかな音楽が流れています。一見、大型のカフェや書店の雰囲気です。
10月1日、リニューアルオ-プンした神奈川県の海老名市立図書館(写真)。市教育委員会の担当者は渋い顔ですが、マスコミから「ツタヤ図書館」と称されています。市民の税金11億円をかけて改修されたものの、管理・運営がレンタル大手・ツタヤを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などに市の「指定管理者」として委託されています。
風俗店案内の本も
海老名市立図書館の「ツタヤ図書館」化に対しては市民の中からいくつも心配の声が上がっていました。CCCが運営に関わる佐賀県武雄市の図書館で、CCCと出資関係のあった古本業者から中古本を蔵書として購入していたこともその一つです。
海老名市民の懸念は的中しました。「ツタヤ図書館」のオープン前、「すべて新刊」として購入した約7千冊の本のなかに、古い雑誌や廃刊本も含まれていたことが市議会で発覚。伊藤文康教育長は「騒動になり、申し訳ない」(「読売」9月19日付)と陳謝せざるを得ませんでした。そのごも蔵書に海外の風俗店を案内する不適切な本が含まれていたことが判明。市教委は10月7日、これらの本を書棚から撤去することを決めました。武雄に続いて海老名でも選書の不透明さが浮き彫りになっているのです。
公立図書館は本来、「国民の教育と文化の発展に寄与する」(図書館法第一条)ことを目的としています。学校教育や家庭教育の向上も援助し、市民にとっては「夢のある施設」といっても過言ではないでしょう。海老名の図書館がこうした目的に向かって運営されることを切望し、当面する課題を考えてみたいと思います。
1、図書選定を抜本的に見直す「選書委員会」に
CCCの役員は武雄での不適切な選書について、「武雄市のときは、ど素人だった」(「朝日」10月9日付)と弁明しています。しかし公立図書館の運営に”ど素人”が乗り出すこと自体、見識が疑われ、責任が問われるというものでしょう。
くわえて、海老名でも重ねた不適切な選書にその言い訳は通用しません。海老名の「ツタヤ図書館」の館長や少なくないスタッフは、武雄市図書館に勤務後、海老名に“移住”してきたからです。
「ツタヤ図書館」の選書には抜本的な見直しが必要です。海老名市教委は近く指定管理者らを交えた選書委員会を設置する(神奈川新聞10月6日付)と言われていますが、抜本的な見直しを可能とする選書委員会の構成と実践が強く求められているのです。
市民のリクエストを柱に
海老名の図書館はこれまで、市民から「新刊本は予約してもなかなか購入してもらえない」との声が上がっていました。他方、隣町の座間市(人口は海老名市とほぼ同規模の13万人)の市立図書館は、利用者から「予約すると、ほとんど応えてもらえる図書館」との好評を得ています。市民一人当たりの年間貸出冊数も海老名の4.5冊に対して、座間は7.7冊と、大きく上回っています。
海老名、座間それぞれの選書に対する市民の評価の違いはどこから生まれているのか。考えられる大きな要因の一つは、海老名は選書がこれまでも民間業者に委託されていたのに対して、座間は選書が市職員である館長の責任のもと、市立図書館の独自の業務として自律的に行われていること、および選書の基準が座間では「利用者の予約(リクエスト)を極力優先する」(同図書館)が貫かれていることです。図書購入費(年額)は、海老名の約2000万円に対して、座間は約1600万円です。
海老名の「ツタヤ図書館」は選書に際し、利益優先ではなく、市の基準が示す「市民の要望を考慮する」を文字通り確立するかどうか、厳しく問われています。
2、市民に親しまれ、災害時の避難も考慮した図書館へ
①幼児・児童フロアでの避難訓練は緊急課題
海老名の「ツタヤ図書館」は、“一等地”である1階の大部分がツタヤ書店やコーヒーのチェーン店・スターバックスで占められています。結果、旧図書館の一階にあった幼児・児童向けの図書は4階へ。開館直後の日曜日、4階の同コーナーは親子づれで満杯状態になり、入場が制限されました。
4階から下に降りる階段は一カ所のみです。非常階段はありますが、同階段に出るドアは施錠されているうえ、「4階の非常階段を使う避難訓練はまだ行っていない」(同図書館司書)と説明されています。
首都直下型の地震はいつ起きても不思議はありません。「ツタヤ図書館」での幼児・児童を対象とする避難訓練は緊急課題です。
②利用の多い雑誌コーナーの拡充を
各地の図書館で雑誌コーナーは利用の多いコーナーの一つです。旧海老名市立図書館でもゆったりとしたスペースが確保され、多くの利用者が訪れていました。ところが「ツタヤ図書館」の同コーナーは、「ビジネス」の案内板がかけられた部屋の狭い一角にあります。旧図書館で継続して購入された週刊誌の「サンデー毎日」「AERA」「ニューズウィーク」、スポーツ関係の「ナンバー」「ベースボールマガジン」、裁縫関係の「すてきにハンドメイド」などの購入はストップ。継続して定期購入する雑誌のなかに、スポーツ・健康・教育関係や女性誌などは皆無に近い状況です。これは、「雑誌コーナーにない冊子は館内のツタヤ書店で購入か発注を」との方針によるものでしょうか。
今日、格差と貧困が広がるなか、家庭の図書購入費は縮小しています。「市民に役立つ」という公立図書館の役割はいっそう求められています。
③身体が不自由な人への宅配を無料に
座間の図書館には、身体が不自由で図書館に来ることができない市民の自宅に本を無料で届けて、返却してもらう宅配制度があり、喜ばれています。こうした地域に根差す無料の宅配制度は最近、茅ヶ崎市立図書館でも企業とタイアップして開始されました。しかし海老名の図書館は宅配制度がありますが、有料のため、借りて返すさい、合計で千円かかります。
高齢化社会を迎えるいま、気軽に利用できる宅配制度への期待は極めて高いものがあります。
④もっと利用しやすい館内に
海老名の「ツタヤ図書館」には、書架と書架の間隔が狭いうえイスも置かれているため、車イスの障害者がほとんど通れないフロアがあります。
CDコーナーは、「ジャンル別に置いている」(スタッフ)との説明ですが、アイウエオ順ではないため、CDを一枚選ぶ際もいくつもチェックしなければなりません。「邦楽あ」の表示の個所では、すぐ横にあるのは天童(てんどう)よしみのCDで、新垣(あらがき)勉はそれから約40枚後ろに置かれているという未整理状態です。
朝日新聞の縮刷版は、1階と3階に分散(「スペースの関係で」〈スタッフ〉)しているうえ、1階の縮刷版は大人でもすぐ手が届かない上段にあります。
郷土資料(海老名の郷土史や教育史など)はカギ付きのガラス書棚に納められています。利用する際はその都度、係員に開錠してもらわなければなりません。
3、「市民懇談会」開き、よりよい方向の探究を
いま海老名市民のなかには、今回の図書選定をめぐる疑惑やこんごの図書館運営のあり方をめぐり、多くの疑問や意見が生まれています。また、全国2例目の「ツタヤ図書館」は全国的にも注目されています。よりよい方向を市民も参加して探究するために、市当局・館側と市民とが率直に話し合う「懇談会」の開催を呼びかけます。
4、図書館協議会の復活を
海老名の「ツタヤ図書館」には現在、図書館法にもとづく図書館協議会が設置されていません。かつての市立図書館には設置されていましたが、「平成22、3年頃、廃止された」(市教委担当者)といいます。また、図書館運営の長期的ビジョンなどを示す「サービス計画」もありません。
同協議会は図書館法によれば、図書館の行う図書館奉仕について館長に対して意見を述べる機関とされています。図書館の事業や運営が館側の意向だけではなく、市民の声も反映した形で行なわれることを、法的に保障する制度の一つです。
知る権利をもつ市民
鎌倉市立図書館の図書館協議会は、学校教育の関係者、有識者、公募の市民で構成し、会議の議事録も作成されています。座間市の図書館協議会は、学識経験者、小中学校校長会、おはなし会、公民館運営審議会などの関係者6人で構成(任期2年。年4回ほど開催)し、市民の傍聴も可能です。
海老名でも同協議会復活の声を広げ、設置のための市条例を制定しましょう。地域の教育と文化の発展に寄与する図書館を、知る権利をもつ市民の力でつくろうではありませんか。
[参考]座間市立図書館は、「図書館の自由に関する宣言」(1954年に採択され日本図書館協会の綱領)を掲示しています。同宣言には、図書館が国民を特定の思想に導く機関として機能した戦前の歴史への反省が盛り込まれています。
「図書館は基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。この任務を果たすために、図書館は次のことを確認し実践する。
第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまでも自由を守る」
2015年10月9日金曜日
2015年9月19日土曜日
鉄柵と国民のエネルギー
昨日(18日)、国会前に着いたのは日没前の夕方5時過ぎでした。桜田門側から国会正門前へ。歩道の右側には各種団体の旗が林立しています。正門前少し左手前の木陰にスペースを見つけ、足を止めました。
自宅を出る直前、安倍晋三首相に対する問責決議案が否決され、安保法案が採決・成立する見込みとのニュースが流れていました。でも負けないと、国会前へ地域の知人と出かけたのです。
鉄柵を間に
歩道と車道とは警察の鉄柵でさえぎられていました。鉄柵のすぐ後には警察官が横一列に配置されています。さらに車道の中央部側にも鉄柵と警官が並び、その後に蒲鉾型の装甲車が隙間なく置かれています。仮に中央の車道にたどり着こうとすると、5重の“壁”を乗り越えなければなりません。
「柵にさわるな」。身体を楽にしようと鉄柵に寄りかかる70代の男性に、警官が威圧を加えました。「柵を乗り越えようなんて考えていませんよ」。毅然と告げる男性。背中を押す警官。しかし男性は動じません。他の参加者も鉄柵を間に若い警官に、「仕事とはいえ、大変だね」と話しかけています。
解放された車道
6時30分、集会が始まりました。続々と詰めかける参加者。埋まる歩道。参加者を車道に出さないようにと、警官は歩道側の鉄柵を中腰で支え続けています。
すると、歩道横の車道の後方から、参加者が次々にやってくるではありませんか。歩道側の私たちに手を振っています。警官は歩道側の鉄柵を支える必要がなくなったのです。間もなくして退去していきました。
そのご歩道側の参加者は鉄柵を乗り越え、車道に出ました。木に隠れていた国会が正面によく見えます。広がる解放感。「主権者は私たち国民だ」と改めて思います。そして瞬く間に車道は装甲車近くまで、参加者でぎっしり埋まりました。
車道の一部開放は、押し寄せる参加者の波を前に、警備側が不測の事態を避けるためにとらざるをえなかった策かもしれません。同時に歩道側に鉄柵と警官を配置したことは、参加者の昨日の規模が想定外であったことをも示しているのではないでしょうか。
「憲法違反の安保法案。廃止まで闘う」。こう決意する国民は、安倍政権の思惑を超えて確実に広がっています。(写真=国会正門前、中央の白い建物が国会議事堂。9月18日午後7時34分)
2015年9月15日火曜日
がんばりどきです
みんな「安保法案反対」の同志
夕刻、急ぎ足で電車に乗車。国会議事堂前のエスカレーターでは前の人の白いTシャツの背中に、「この国の宝は憲法9条です」。青い字体が鮮やかでした。
国会の正門前に向かうと、大勢の人が同じように向かって歩いています。赤ちゃんを抱っこした若い母親も、会社帰りとみられるサラリーマンやOL風の人も、大きなヘッドホンを付けた若者も。創価学会の3色旗(青・黄・赤)を掲げた男性もいます。みんな「安保法案反対」の同志です。
命は地球よりも重い
集会が始まりました。政党代表の力強い挨拶が続きます。各界の発言ではノーベル賞作家の大江健三郎さんも登場。「最近の集会は若い人の顔が見られます。ここには民主主義の力があります」「憲法の精神に立ち戻るしかない。それしかない」。憲法に立脚する政治をとの切々たる訴えに、大きな拍手が湧き起こりました。
3児の母親と自己紹介した西郷南海子さん(安保関連法案に反対するママの会)の挨拶も印象に残りました。「だれの子どもも、ころさせない」との合い言葉にふれて、「人の命は作り直すことはできない」「人間一人ひとりはかけがえのない命を持っている」。人間の命は地球よりも重いとの言葉を改めて思い起こしました。
新しい政治をめざす
挨拶の合いまに、コーラーが叫びます。「戦争法案絶対反対」「9条壊すな」「安倍やめろ」。テンポよく繰り返され、たたかいの気分は否応なく高揚します。
70年安保や沖縄返還のたたかいも、リズム感のあるシュプレヒコールや道いっぱいに手を結んで広がるフランスデモ等で盛り上がりました。平和と民主主義の運動、そして新しい政治をめざすたたかいは個々の場面では紆余曲折があっても、歴史的には確実に継承、発展していると改めて思います。
激励の声が届くように
帰途、国会前の歩道からは銀杏の匂いが漂います。いつの間にか秋がやってきています。地下鉄の入り口のそばで、初老の女性が一人ひとりに届くように激励の声を発していました。「お疲れさまでした。いよいよがんばりどきです」 (写真=国会正門前、9月14日午後6時44分)
2015年9月6日日曜日
酸味と甘みのバランスもよく 梨狩り
2015年9月5日土曜日
時代遅れの戦争法案
安倍晋三首相は4日、読売テレビの番組で戦争法案にふれて、「(米軍が)日本を守っているのに、日本は何もしないとなれば日米同盟は終わる」と発言しました。
あたかも米軍が日本や平和の守り手であって、日本はこれまで傍観者でもあったかのように描かれていますが、これほど手前勝手な議論はありません。
米国の戦争の忠実な協力者
だいたい米国は戦争と武力行使連続の歴史をもつ、「世界で一番危険な国」(藤井正希・群馬大学准教授)です。そして日本政府も日米安保条約=日米軍事同盟のもとで、絶えず米国の戦争の忠実な協力者として危険極まりない役割を果たしてきた張本人ではありませんか。
まず米国のベトナム戦争(1950年代から75年)。のちに米政府高官も証言した通り、米国のでっちあげによる侵略戦争でした。在日米軍基地は米軍の爆撃機が沖縄から飛び立つなど、その最前線基地として使用され、沖縄はベトナムの人民から「悪魔の島」と呼ばれました。
2003年に米英軍が開始したイラク戦争も、大量破壊兵器の保有という虚偽情報にもとづく侵略戦争でした。10万人以上という罪のない市民が犠牲になるとともに、テロ組織がばっこする大きな要因になりました。世界でいち早く戦争支持を表明し、自衛隊をイラクに派兵した日本にも当然、相応の責任があります。しかし日本政府はいまなお自らの過ちを検証していません。
同時に、この間の戦争をめぐる問題には特別重要な教訓があります。ベトナム戦争のさい日本の協力が在日米軍基地の使用にとどまったのも、イラク戦争のさい自衛隊を派兵したものの「非戦闘地域」での支援にとどまったのも、憲法9条の歯止めがあったからです。
実る外交による成果
安倍首相にとってこの9条の輝く値打ちは、「日本は何もしない」と勝手に描き出しているように、打ち消したい対象にほかなりません。戦争法案の柱に、武力で米国を守る集団的自衛権の行使を持ち込んでいることはその端的な例です。
しかしそれは戦争路線であり、国際社会の動向に照らすならば、「時代遅れの議論」(寺島実郎氏)そのものです。
今日の世界はNATO(北大西洋条約機構)のような軍事同盟でさえ、国際的テロ組織ISへの対応にも示される通り、それぞれの国が主体的に考えて判断し、行動することが流れになっています。また、イランの核開発問題の解決に向けた同国と欧米などとの最終合意や、米国とキューバの国交正常化など、外交による成果も実っています。
安倍首相が成立を急ぐ戦争法案に未来がないことは明白です。いよいよ撤回か廃案しかありません。(写真=地域の戦争法案反対集会)
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