2025年12月30日火曜日

「戦争反対」いつでも、だれにでも

 


    「あのときのおにぎりが忘れられないんですよ。みなさんの親切なお気持ちが伝わってきて、とってもおいしかった」。

 ある市民団体の講演会。終了後、会場の一室で講師の海老名香葉子さん(エッセイスト)を囲む懇親会が開かれました。いくつもの手料理が並び、なごやかな集いに。

懐かしむように同場面を振り返っていた海老名さんが亡くなりました。92歳。1945年の東京大空襲では父母ら家族6人が犠牲に。戦災孤児となり、「歯ブラシもなかったので、歯を手で洗う毎日」でした。

特筆されることは、そうした戦災体験や悲しみをエネルギーに、戦争反対・平和の尊さをいつでも、どこでも、だれにでも、私財を投じて訴え続けたことです。

「武器を持って国外に出るというのは絶対にだめ。大反対です。軍隊などとんでもない。憲法9条は守り通さなければいけない」

自身の体験をもとにしたアニメ映画「うしろの正面だあれ」は子どもから反響を呼び、戦争体験を語り継ぐ東京・上野公園内での集いは千人規模に。その取り組みや影響力は大衆的な広がりをもちました。

いままた、特定の国を名指しし、戦争をあおる潮流がばっこしつつあるように見えます。そうした流れにけっして屈せず、草の根から戦争放棄の憲法9条をいっそう生かす―ここにこそ海老名さんの遺志にまっすぐ応える道があると確信します。