生活苦のすくい取りなどのパフォーマンスに、惑わされてはならない▼「核武装が最も安上がり」。発言者は原爆による惨状を正面から認識したことがあるのだろうか。核抑止は破られる危険があり、核戦争になれば人類は絶滅の淵に追いやられる。ゆえに広島・長崎の両市長は8月、そろって核抑止を批判した▼その極右的主張は自分らの憲法案と軌を一にする。天皇の元首化や国家主権、軍隊の保持を掲げ、日本を戦前に戻す内容だ。明治憲法下の侵略戦争は何と非道であったか。朝ドラ「あんぱん」でも日本軍に親を殺された中国の少年がかたきを討つ場面などは胸が締め付けられた▼いま日本国憲法下、「国民として誇るものは民主主義と平和主義」(加藤周一・評論家)だ。差別や分断は戦争への道との批判が各界各層から起きている。平和の尊さを多面的にアピールする若い世代も目立つ。歴史に背を向ける逆流は必ず行き詰まりを深めざるを得ないであろう。