3歳と5歳位の2人の男の子が座り、その前に父親が立っていました。突然、下の子が泣き出し、父親が抱いても泣き止みません。
だんだん泣き声が大きくなりましたが、周りのお客さんはみんな笑顔。隣の高齢の女性はその子の足をさすっています。でも、泣き声はふしをつけて大きくなります。
泣く男の子が顔を向けている先に、熊のぬいぐるみを持つ女の子がいました。女の子の隣の母親がぬいぐるみを動かして男の子に見せると、泣き声が収まったのです。
父親は不思議に思ったのか、振り返ってぬいぐるみの方を見てうなづきました。
次のバス停で高齢の男性が乗ってきました。前方に座っていた女性が立って席を譲りました。男性は初め遠慮していましたが、お礼を言って座りました。そして、熊のぬいぐるみを持つ隣りの女の子に話しかけました。「かわいい熊だね」
初対面なのに、親しい人が集まったかのようなコミバスの車内。何か映画を観ているようなひとときでした。豊かな心の持ち主が偶然乗り合わせたのでしょうか。