安倍晋三首相が過激組織「イスラム国」の人質事件を口実に自衛隊の軍事活動を強める動きを見せていることは重大です。
25日のNHK番組で首相は、「海外で邦人が危害にあったとき、現在自衛隊が能力を十分に生かせない」と述べて、自衛隊の海外での武器使用の範囲を拡大する方針を指摘。併せて「イスラム国」掃討の有志連合への自衛隊の参加についても可能との考えを示しました。
日本が米国とともに武力行使や戦争への道を突き進む姿勢を重ねて明らかにしたものです。人質の生命への影響はもとより、海外で働くNGOや観光客、さらには日本本土へのテロの危険さえ高めざるを得ません。
「イスラム国」対策の後方支援 極めて危険
首相は今回、「イスラム国」対策での後方支援について「武力行使ではない」と述べ、「非軍事分野での難民支援」と釈明しています。
しかし、集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定は、自衛隊の補給や輸送などの後方支援について、「非戦闘地域」に限るという従来の枠組みを撤廃。戦闘地域への派遣も事実上可能としました。
「イスラム国」掃討に向けた米国主導の有志連合には軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)を中心に、約60の国や機関が参加しています。この活動を支える後方支援に日本も乗り出すならば、それこそテロリストたちの思うつぼというものでしょう。有志連合の昨夏の空爆開始以降、すでに攻撃に加わるカナダやオーストラリア、フランスでテロなどが起きています。
憲法違反の集団的自衛権行使容認の閣議決定は撤回すべきです。有志連合への支援をも可能とする「安保法制」も国会に提出されるべきではありません。憲法9条にもとづく平和外交の推進こそ、日本が世界から信頼を集め、世界平和に貢献する大道です。