取り出したのは算数の宿題。テーマは「速さの表し方」です。
「算数は好き?」と尋ねると、「キライ」
宿題が終わったところで、事前に準備していた動物「キリン、シマウマ、ダチョウ、チータ」の速さくらべの表(写真)を見せました。下手ながら書いた動物のカットとともに、少し興味がわいた様子です。
どっちかなぁ
「キリンとシマウマはどちらが速いと思う?」
「シマウマ」
「どうして?」
「走った時間が同じ40秒で、進んだ距離はシマウマのほうが長いから」
「そうだね。次にシマウマとダチョウとではどっちが速い?」
「ダチョウ」
「どうして?」
「進んだ距離が同じで、走った時間はダチョウのほうが短いから」
「いいね。ダチョウとチータとでは?」
「どっちかなぁ」
秒速の”発見”
「何かを出すと、はっきり比べられるんだけど」
「秒速?」
「そうそう。授業で習ったよね。1秒間あたりに進む距離で表した秒速をそれぞれ出すと比べられる。やってみよう」
ダチョウの秒速は、665÷25=26.6(㍍)
チータの秒速は、217÷7=31(㍍)
「比べると、どっちが速い?」
「チータだ」
「うん。何㍍速い?」
「約4㍍」
「そうだね。じゃ、キリンとシマウマの秒速は?」
キリンは、620÷40=15.5(㍍)
シマウマは、665÷40=16.625(㍍)
「4つの動物を速い順番に並べると?」
「チータ、ダチョウ、シマウマ、キリン」
「こんど教室は」
「いいね。じゃ、おまけに聞くよ。チータと人間とはどっちが速いと思う?」
「それはチータだと思う」
「本当かな。人間の速さを出さなくちゃ。オリンピックの100㍍競争で走る時間が10秒だとすると、その秒速は?」
「100㍍÷10秒で、答えは10㍍かな」
「そうだね。チータは人間より何倍速い?」
「約3倍」
「できた、できた。きょうのような勉強なら、算数に興味が持てそう?」
「うん。こんど教室はいつですか」
Sさんの表情が柔らかでした。(参考・遠山啓著「算数の探検 第四巻)