首相は7日の衆院予算委員会で、自衛隊の核兵器輸送について、「120%あり得ない」と否定しつつ、安保法案で同輸送を禁止する必要はないとしました。
核兵器の輸送をめぐっては、中谷元・防衛相が5日の参院特別委員会で「法律上は排除していない」と答弁しています。安倍首相は輸送などあり得ないと言い張るならば、安保法案に核兵器は輸送の対象外と明記すべきでしょう。
核を主軸に据えた日米同盟の強化
それさえしないのはなぜか。首相は6日、広島市での記者会見で、今回の安保法案により「日米同盟が完全に機能する」と強弁しています。これまで日本政府が米国の「核の傘」に頼る安全保障政策を進めてきたことも明らかです。
つまり安保法案により、日米軍事同盟は“核を主軸に据えた同盟”としてより強化される。これこそ今回の真相であり、国民の命や安全は一段と危うくなりかねません。
実際、安倍政権は、米本土や米艦船を狙う弾道ミサイルを日本が撃ち落とすことも、憲法解釈上は認められると語っています。防衛網を突破しようとする周辺国が、安保法案を核戦力増強の口実に使う恐れさえ生まれているのです。
核兵器の法的禁止は国際的潮流
6日、広島の平和宣言で松井一実市長は核兵器について、「非人道性の極み」「絶対悪」と断じました。筆者も広島の被爆者に会ったことがあります。被爆から30年、1975年のときです。語られるそのむごさ、残虐性に胸が締め付けられ、「核兵器は二度と使われてはならない」と強く思ったことをいまでも覚えています。
核戦争反対・核兵器廃絶は国民的な願いです。また、核兵器使用を人道に反すると訴える共同声明(NPT〈核不拡散条約〉再検討会議、2015年4~5月)に159カ国が賛同するなど、核兵器の法的禁止は国際的な潮流です。
こうした大道に背を向けて、安倍政権が好核の安保法案を進めるかぎり、その矛盾と行き詰まりはいっそう深まらざるを得ないでしょう。(写真=ひまわり、8月4日撮影)