教室の終了時間が近づいたとき、A君が「百マス計算をやる」と言い出しました。かれらが5年生のとき、よく挑戦していた掛け算の練習です。
すると、B君も「ぼくもやる」。
女子のCさんが「じゃ、いっしょにやったら。先生と私がそれぞれ時間を測るから」と提案します。「競争じゃないからね。大事なのは自己ベストを出すこと」と、いつもと同じ言葉を述べる私。
結果、A君は時間で自己べストを出しました。最初の頃と比べると、理解度や集中力が飛躍的に高まっています。顔をほころばすA君。
他方、自己ベストを出せなかったB君。どうフォローしようかと思案していると、「回数ではがんばったよ」とつぶやきました。確かにB君の百マス計算の挑戦回数は支援教室のなかで断然トップです。有終の美を飾ったと、みんなで笑い合いました。
教室を終える時間が来ました。B君が「これ」と、一枚の紙を取り出しました。母親からのメッセージカードです。
「長い間、お世話になりました。ありがとうございました」
小さな紙が輝いて見えました。
教室から出た3人は何度も振り返り、手を振りながら去っていきました。